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「日本の方が“閉塞感”は強い」パリから帰国した雨宮塔子が感じた“自粛の空気”

雨宮塔子さんインタビュー

2020/09/06
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 28歳でTBSを退職した1999年から、パリで生活をしている雨宮塔子さん(49)。『NEWS23』(TBS)のキャスターを務めていた約3年間(2016年7月〜19年5月)を除いては、子育ても仕事も、ずっとフランスを拠点に行ってきた。

 今年に入ってフランスは新型コロナウィルスの爆発的な感染拡大に見舞われ、約2ヵ月に及ぶロックダウンも経験した。そんななか、雨宮さんはジャーナリストとして、母として、パリでどのような日々を過ごしていたのか。一時帰国された機会にお話を伺った。

©山元茂樹/文藝春秋

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――目下、海外からの入国制限措置が取られていますが、この時期にフランスから日本へはスムーズに入国できたのでしょうか?

雨宮 やむを得ない事情があって7月下旬に帰国したのですが、それができたのも私に日本国籍があるからでした。日本国籍があれば、パリからの航空チケットも通常通りに買えますし、フランスを出国する際に何らかの検査を受ける必要もありません。ただ、羽田に着いてからは、まず空港内でPCR検査を受けます。私の場合、結果が出るまで指定された場所で約4時間待機しました。結果は陰性でしたが、たとえ陰性でも、公共の交通機関や一般のタクシーで移動することは禁止されているので、空港紹介の専用ハイヤーで都内の実家に帰りました。その後は2週間、実家で待機して、外出を控えていました。

――フランスでは新型コロナウィルスによる死者数が、既に3万人を超えています。コロナがヨーロッパ中に広がっていったとき、フランスはどんな雰囲気だったのでしょうか。

「え、アジア人?」「この中国人が!」

雨宮 当初は、アジア人に対する差別がすごかったですね。武漢で感染爆発が起こり、ダイヤモンド・プリンセス号が世界的なニュースになった頃は、特にひどかったです。タクシーに乗ろうとしても、運転手から「え、アジア人?」と敬遠されたり、メトロに乗ったら、向かいの席の女性が駅で降りるふりをして、こっそり他の車両に移っていったこともありました。街の様子をiPhoneで撮影していたときも、「撮影許可を取ったのか? この中国人が!」と、私を罵倒する人もいて。

フランスでは自転車通学・通勤が推奨され、古い自転車の修理には国から補助が出るように。街の修理屋さんは大繁盛(6月12日撮影) ©雨宮塔子

――それは心が折れそうになりますね。

雨宮 でも、それほど落ち込んだりはしなかったんですよ。私のアジア系の友人たちの中には、「すれ違いざまに唾を吐きかけられた」といった、もっとひどい目にあっている人もいたので……。得体の知れないウィルスのせいでみんな余裕がなくなって、どこかにストレスのはけ口を求めているのかもしれないと思えたので、あまり気にしないように心がけました。3月以降になると、フランス国内の感染者も急激に増えたので、あからさまなアジア人差別は減っていきました。

――急激な感染拡大を受けて、3月中旬から5月中旬まで、マクロン大統領はロックダウンを発令しました。