認知症でまず第一に大切なこと、それは親族が認知症のサインにできるだけ早く気づくことだ。そして次に明確な診断を受けること。そのためにはどこに行けばよいか、受けられるサービスなど、認知症へ対応する正しい道筋を子細に解説する。(全2回の1回目/後編に続く)
異変のサインを見逃すな
認知症になる一番の原因は「加齢」、すなわち歳を取ることだ。高齢になるほど、誰もが認知症になる可能性が増していく。
2025年には国内の認知症患者数は700万人を超え、認知症予備軍のMCI(軽度認知障害)の人も同等数に近くなると予想されている。すなわち、65歳以上の3人に1人が認知症かMCIになっている時代の到来だ。
もはや、認知症は“我がこと”なのだ。
だが、悲観することはない。認知症になっても家族や仲間と幸せに暮らしている人は大勢いる。それには認知症を正しく理解すること。さらに認知症に対応した生活環境を整えることが非常に重要となる。
そのために必要な手続きを詳説していきたい。
まず重要なのは、家族をはじめとする周囲の人間が、早く異変に気づくことだ。認知症は初期の段階ではゆっくりと進行するため、早く気づけば、慌てずに準備ができる。
だが、「うちの親、ひょっとして認知症?」という気づきは、いうほど簡単ではない。認知症はある日突然に家族の名前も思い出せなくなったり、それまでできていた行動ができなくなるといった、わかりやすい病気ではないからだ。
身近な人こそ変化に気づきにくい
ケアタウン総合研究所の高室成幸代表も言う。
「自分の親や伴侶など、身近な人の変化は、毎日一緒に生活していると、なかなか気づきにくいものです」
子の側も、親がボケ始めているとは思いたくない、という心理が邪魔をする。
「日々の生活の中で『あれっ?』と思うことがあっても、『昨日、夜更かしをしていたから体調が悪いんだな』などと心理的に打ち消してしまうのです」(同前)
また、親の変化に子供が混乱し、「どうしてこんなこともできないの!」と怒ったり拒絶し、正面から向き合わなくなってしまうケースも多いという。
数多くの認知症患者と接してきた、土岐内科クリニック院長で医療法人ブレイングループ理事長の長谷川嘉哉医師が指摘する。
「同居する実の息子さんや娘さんより、親戚や友人といった、ちょっと距離のある人のほうが変化を鋭く見抜くことが多い。気になることがあれば、盆暮れ正月だけでなく、機会を作ってそういう人たちに引き合わせるといいでしょう」