昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

世界大学ランキング、東大凋落の理由 なぜシンガポールや中国の大学よりも低いのか

ジム・ロジャーズも娘の教育のためにシンガポールに移住

2020/09/09

幼少期からの過酷な中華圏の教育競争

 15歳児を対象にした国際学力テスト(PISA)では科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3分野で2015年にシンガポールは世界首位でした。2018年度には中国に抜かれたもののシンガポールは2位です。その他、マカオ、香港など中華圏の学力の高さには圧倒されます。ちなみに、日本は読解力15位、数学的リテラシー6位、科学的リテラシー5位でした(2018年)。世界3大投資家のジム・ロジャーズ氏も娘たちの教育のためにシンガポールに移り住み、娘をローカルスクールに入れているほどです。 

 シンガポール国民の多数を占める中華系には、倹約をして次世代のために惜しみなく投資をする習慣があります。明晰な頭脳さえ手に入れることができれば、お金は後から作ることができるという考え方なのです。シンガポールの初代首相のリー・クアンユーもシンガポールの最大の強みは人材と考えており、教育のゴールは国を作る指導者や管理職の確保で、早期から成績別で生徒を選別してコースを分けています。

©iStock.com

 ローカルの保育園や幼稚園でも幼少期から英語と中国語のバイリンガル教育は当たり前でAI時代に欠かせないプログラミング教育が充実している学校もあります。日本の年中児頃からそろばんを習ったり、中国語の書き取りの宿題が出たりして親も大変ですが、日本人の家庭で育った子供でも中国語が話せるようになると言います。

 筆者にも6歳の娘がおり、外国人が通うインター校に行っています。ローカル校よりずっと遊び中心と聞いていたのですが、昨今は中国など中華圏から教育のために移住をしてくる生徒が増えています。 欧米よりも近く、安いという理由でシンガポールを選ぶ人が多いようです。しかし、大学はイギリスやアメリカなどを目指すことが一般的です。やはり、この世界ランキングを気にするからです。中国人やインド人が学力を押し上げているために、学校は前倒しでカリキュラムを組んでいると長くその学校にいる人も教えてくれました。

 娘はELL (English Language Learner 英語学習者)という英語サポートクラスに入っているのですが、アジア人で固まったらどうしようという心配は杞憂でした。なんと白人の生徒も多かったのです。読み書きのレベル等で数値化して判定するために、アジア人ではなく、欧米人(両親の母国語が英語ではない生徒や、母国語でも読み書きが苦手な生徒)もかなりいるようでした。5歳の時の幼稚園のクラスでは、上海から来たばかりの生徒が英語で5行程度の日記を書いていたので驚きました。親に聞いたところ、「上海ではもっと競争がすごくて、シンガポールはのんびりしている」と言うのです。そのアジア人達がこぞって欧米の大学を受験するので欧米の有名校のランキングは非常に高くなるのです。

©iStock.com

 もちろん日本の小学校受験も過酷で、父親の背の高さほどのプリントを1年間で解くなどと言う話も聞いたことがあります。しかし、それは日本語で行われる教育です。中華系の生徒達は母国語ではない英語でも優秀な成績を収め、さらにスペイン語などの外国語の習得にも熱心です。シンガポールでは低年齢の時期から授業についていくためにチューターをつけることが一般的です。月額15万円ほどする家庭教師費用を支払って全教科にチューターをつけているローカル校に通わせる日本人家庭も多いです。我が家も英語の読み書きに苦戦をしていてチューターを中国人から紹介してもらったのですが、まだ日本でいうと幼稚園の年長です。そんな低年齢から過酷な競争が、アジアでは繰り広げられているのです。
 

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー