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まるで往年の鹿取のように、今日もマシられる男

現在、1軍最年長投手のマシソン ©文藝春秋

 困った時のマシソン頼み。回またぎ、連投なんでもあり。今季もチーム最多の50試合登板で防御率1.75。今の背番号20を見ていると、往年の鹿取義隆(現巨人GM)を思い出す。現役時代、雨の日も風の日も黙って投げまくったサイド右腕は、酷使を揶揄した「鹿取(かと)られる」という造語も生んだ。子どもの頃、俺はそんな鹿取が好きだった。そして同じように、大人になった今は「マシられる」男に共感する日々だ。

 9月に入り、NPB通算350登板に到達。投げる試合のほとんどがチームの勝敗に直結するヘビーなシーンで、リリーフ投手はいつ何時でも抑えて当然と思われがち。たまに救援失敗するとここぞとばかりに叩かれまくる。しかも、最近のマシソンは以前は全盛期の山口鉄也と2人でワリカンしていた仕事を1人でやっているようなものだ。なんてハードな職場環境だろうか。まるで口うるさいクライアントをいくつか抱え、毎晩終電で帰ってきて、シャワー浴びて仮眠を取り朝イチでまた会社に向かうみたいな猛烈な働きぶり。なのに、マスコミに向かって自身の起用法に対する愚痴をこぼすこともない。マジカッコいいっすよ、スコット・マシソン。連日のようにマシられる男を見ていると、自分もちょっとやそっとのことで仕事をバッくれるわけにはいかないと思い知らされる。
 
 結局、いい選手の定義とは、怪我をしない選手だと思う。監督がいつでも起用できる状態でいること。激しい競争が繰り広げられるプロ野球で、当たり前のようにその舞台に立ち続けること。簡単なようで実はとても難しい。先週、横浜スタジアムでのDeNA戦、僅差の勝ち試合終盤でたった2試合続けて投げないだけで、ファンから「何かあったのかマシソン?」なんて心配される投手。考えてみたら、これは凄いことだ。

 将来的にメジャーリーグで投げている姿を息子に見せたいという気持ちはよく分かる。だから今は、マシソンが投げることが当たり前。いてくれることが当たり前。その幸せを噛みしめながら、今夜もマウンドへ上がる背番号20に拍手を送ろうと思う。

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 See you baseball freak……

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