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「このノリで、僕ら行く自信ありますね」

 若手時代の石橋は、ジャーナリストの筑紫哲也との対談で以下のように話していた。

筑紫 だいたいとんねるず人気は、もうこの秋で終わるんじゃないかという声があるんだけどね。

 

石橋 それは、自分たちでは大丈夫だと思いますね。なぜかというと、僕らはまったく芸を持っていないところでスタートしたから、いまさらうんぬんされても、出すものないですし。最初から出してないです。だからまったくこのノリで、僕ら行く自信ありますね。

 

(新人類の旗手たち 筑紫哲也の若者探検 とんねるず——『朝日ジャーナル』1985年9月20日号)

 とんねるずはその後も、テレビを自分たちの遊び場と位置づけて、芸人・歌手・俳優としてさまざまな活動を展開していった。それを成り立たせたのは、とんねるずの頭脳である石橋の冷静なセルフプロデュース能力だった。

 石橋は事務所の社長として、自分たちがどうやって生き残っていくのか、常に冷静に戦略を立てていた。その甲斐あって彼らは後ろ盾のない個人事務所所属でありながら、異例の長期政権を築いた。

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野猿コンサート「撤収」でのパフォーマンス

 そんな彼らの勢いに陰りが見えたのは、彼ら自身の地位が上がり、権力者側になってしまったからだ。持たざる者として意地を張るために見せていた高圧的な態度が、裏目に出て嫌われるようになってしまった。

「日本一面白い素人」がようやくYouTubeにたどり着いた

 でも、彼らがやっていることは、本質的には若手の頃から何も変わっていない。場をかき乱し、セオリーを破壊して、見たことのない景色を見せる。やっていること自体はずっと一貫している。だからこそ、多くの根強いファンがずっとついているのだろう。

 新しい遊び場を求めて石橋がYouTubeに進出したのも当然の流れだ。YouTubeは地上波テレビよりも制約が少なく、とんねるずの芸風には向いている。昨今では芸人のYouTube進出が活発になっているが、石橋がそれを始めるというのは、そんな世の風潮とは別の意味合いがある。芸人が新たにYouTubeを始めたというよりも、「日本一面白い素人」がようやくYouTubeにたどり着いた、という表現の方がふさわしい。

 YouTubeはプロとアマチュアの境い目のない世界だ。究極の素人である石橋がそこに来たというのは、ある意味で原点回帰であるとも言える。高校の部室で仲間の部員たちを笑わせていたかつての「スーパー素人」が、今ではYouTubeで同じことをやっているのだ。