どの研究者も土地の収奪の数値を証明していない
池上 評価されるようになったのですね。
李 ソウル大学の1500人ほどの教授の中で半分ぐらいが社会学や文科系ですが、私のような経歴を持つ者は2人だけでした。その2人以外は、私を批判する資格がありません。
李栄薫さんは、日本が40パーセントの土地を収奪したという説について『反日種族主義』の中で、「どの研究者もこの40パーセントという数値を証明したことがありません」と書いています。著者たちの研究では、そんなデータはどこにもないそうです。
また、もし日本が多くの土地を取り上げたのであれば、日本が戦争に負けた時に、被害者たちは「自分の土地を返せ」と叫んだはずですが、実際には誰もそんなことをしていない。当時、誰もそんな要求をしていないということは、「取り上げた」という事実がなかったということではないか。ということで、著者の説にはかなりの説得力があります。
このように、『反日種族主義』は40パーセントという数字が独り歩きしていることを検証しているのです。
なぜ韓国で多くの人に読まれているのか?
池上 『反日種族主義』は自国を批判する本なのに韓国でベストセラーになっていますね。これまでとはまったく違う動きだと思うのですが、なぜこれが韓国で読まれているのでしょうか。
李 私たちもまったく予想ができなかったことでした。出版前には2万部か3万部ぐらい売れるのではないか、そうすれば結構売れたと言えるだろうと思っていたのですが、実際には11万部近く売れました。2、3週間、総合ベストセラー1位だったのです。
私が最初に申し上げた韓国社会の問題点、そこから発生する危機意識(野蛮性、原始性を克服しなければ韓国社会が先進化できない)は、ただ単に政治的なものではなくて、韓国人が皆感じている、より根本的な危機感ではなかっただろうかと思いました。そして、韓国人が皆共有している一種の危機意識をこの本が代弁しているのではないかと、私なりにはそのように評価したいと思います。
三田 変わりつつある、まさに今はスタート地点にいると考えてもよろしいんでしょうか。
李 はい。だからこの本がベストセラーになったのです。