文春オンライン

ナイキはなぜBLM運動に寄り添うのか? アスリートをめぐる日米「スポンサー狂騒曲」の行く末

2020/09/20
note

 8月27日に予定されていた、全米オープンの前哨戦とも言えるウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝では黒人男性銃撃事件の抗議として棄権を公表すると、BLM運動は人権問題で、政治的な活動ではないにも関わらず、日米でこんな声がちらほらと上がっていた。

「スポーツ選手はこういった行動をすべきではない。黙ってテニスだけしていろ」

「政治活動に参加するな」

ADVERTISEMENT

 全米オープンでの警察官によって殺害された被害者の名前入りのマスク姿も、米国でも大きな話題になった。

2018年撮影  ©文藝春秋

大坂の活躍をスポンサーはどうとらえたのか?

 大坂には日米を含めた14社のスポンサーがついているが、彼女のコート外での活動をどう支援したらいいのか、考えあぐねた企業もあったと思う。

 ナイキ以外で大坂の姿勢を支援する意志を示した米系企業はマスターカードとマッサージ器具を販売するHyperice(ハイパーアイス)だった。

 マスターカードは「コート内外で私たちの心をわしづかみにしました。プライスレスな勝利、おめでとうございます」と、ハイパーアイスは大坂のマスク姿の写真とともに「ミッションを抱えて試合に臨み、チャンピオンになった」という短い動画に、「勝利だけではなく、あなたは刺激をもたらした」というメッセージをツイートしている。彼らは大坂という選手を使って、企業としての姿勢をうまく表現した。

 以前、NBAのレブロン・ジェームズが、差別主義的な発言を繰り返したトランプ大統領に意見をした際に、テレビキャスターから「政治の何たるかを分からないくせに。黙ってドリブルしてろ」と言われ、「これからもどんどん発信していく」とやり返したことがある。大ベテランで誰もが認めるスター選手のレブロン以外、このような発言をするスポーツ選手はほとんどいない。

 22歳の大坂が白人が大多数を占めるテニス界で、今回のような行動をとるのは大きな勇気が必要だったに違いない。その勇敢さを多くの人が認め、受け入れた。

今年の全米OPの決勝はアザレンカ(右)を破って優勝 ©getty

 SNS上では「こういう選手がもっと増えるといいね」、「テニス界はナオミのような選手がいてラッキーだね」というような声とともに、レブロンやミシェル・オバマも彼女を称えた。

 大坂はテニス界を飛び越えて、スポーツ界の新たなヒロインになったが、今回の活躍を受けて、新たな企業がスポンサーとして名乗りを挙げることはまちがいない。確固たる信念と姿勢をもつ大坂が今後どんなスポンサーと歩いて行くのか、ナイキを超える広告を作る企業が現れるのか要注目だ。

ナイキはなぜBLM運動に寄り添うのか? アスリートをめぐる日米「スポンサー狂騒曲」の行く末

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー