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「余計なことをしない」がなぜ大切か

 またプロ野球やJリーグなどの国内の主要スポーツも、いまいち熱を帯びていないように感じているうちに、シーズンも後半にさしかかっています。

 そうしたムードの中でも、なんとか盛り上がりを促そうとして演出に工夫を凝らしたり、売上の確保のために新しいグッズや新しいユニフォームを開発して次々に売り出したり、いろいろと手を打ってはいても、大きな成果に結びついているとはなかなか言い難く、四苦八苦している現実がスポーツ界のそこかしこにあります。

 一言で言ってしまえば、少なくとも今は需要がない、需要が限定的ということなのだと判断せざるをえない。

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 私は、スポーツビジネスにおける2020年の最大のテーマは「サバイブ」、生き残ることだと思っています。

 そのためには、実は、経営マインドとしては「余計なことをしない」。逆の顧客視点にたてば「顧客を高速で回転させない」ことこそが大切なのではないでしょうか。

池田純氏

 スポーツの根幹である「試合」を観客に見せることに注力し、いっそのこと試合に付随したイベントや飲食、グッズなどは最低限必要なものだけに絞る。顧客の欲求を刺激し続けることを、敢えて避けるのです。あるいは注力すべきは、未来に大きく跳ねるようなタネを今のうちに仕込んでおく投資。目先の利益をコロナ前の成功体験や前例、既得権益、権威にとらわれて、拾いにいかない。スポーツも同様、顧客と共にサバイブしなくてはならないのです。

 私が経営を担っているプロバスケットボールのB3・さいたまブロンコスでも、当面の間、「余計なもの」を徹底的に排除していこうと考えています。自分たちの売上補填のために、顧客の財布をコロナ前のようにできるかぎり開かせることに四苦八苦しない。各クォーター間のインターバルに行うミニイベント、チアガールを起用した応援などの演出の類、多種多様なグッズ展開……私がベイスターズの球団社長だったころに積極的に行ってきた施策ですが、それらをあえて「やらない」という判断です。

 力を入れるのは本当に必要なものだけ。不可欠かつ本質的な、いわば“エッセンシャル”な要素に一球入魂、フォーカスするつもりです。