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「余計なことをしない」が大切…スポーツビジネスが「サバイブ」するために必要なこと

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#5

2020/09/22
note

積極的に活用すべきYouTube

 具体案としては、アリーナの飲食で言えば、とにかく最高のビールを提供する。グッズはユニフォーム(オーセンティック/レプリカ)とステッカーだけを用意する。ビールもステッカーも、単価は数百円です。他にもいろんなグッズはありますが、「あれもこれも作りました、全部買ってください」という手法は観客に負担を強いることになりますし、私たち経営サイドにとっても投資がかさみ、在庫リスクを抱えることにつながります。どちらにとってもハッピーではない。つまり、今年に限っては「余計なもの」なのだと私は考えています。

 その一方で、ブロンコスのYouTubeチャンネルは昨日公開し、週次でコンテンツを公開し続けるべく準備を進めています。B3のチームは露出機会が非常に限られているので、地域との接点づくりのためにも主体的な発信の場を設けることはどうしても必要です。さほどコストがかからないYouTubeは積極的に活用するべきツールです。顧客も無料で楽しめます。

 

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 YouTubeでは、選手たち自らがバスケットコートを作っていく過程を紹介するなど、他のチームがやらないようなことを紹介していきたいと思っています。9月27日に開催予定のトライアウトの様子も配信します。

 実はブロンコスには、選手がまだ6人しかいません。10月2日にはB1の開幕が迫っているため(B3は来年1月8日に開幕予定)、他のチームは全てトライアウトをすでに終え、10~15人の選手を確保しています。ブロンコスのトライアウトは最も遅い開催です。

「まだ6人しかいないの?」とよく驚かれるのですが、最後ギリギリのところでトライアウトを開催することにしたのは、実はそれが最もリーズナブル(合理的)だから。最後の望みを賭けてトライアウトに参加してくれる選手たちはやる気に満ちているはずですし、そこには他チームとの選手の奪い合い、余計な駆け引きも存在しません。心からプレー機会を求めている選手たちと真剣に向き合うことができます。極めてシンプルで、だからこそ、見ている人もワクワクする。

 

 YouTubeでそれらの取り組みを配信することは、ブロンコスというチームの「色」を伝えることにほかなりません。そこで大切なのは、「好き勝手に」「自分たちが楽しんで」いろいろなことに挑んでいる様子を伝えることだと考えています。

 あくまで私の感覚ですが、今の苦境をなんとか乗り越えようと四苦八苦して従来型の延長線上で顧客に負担を強いるより、こういう時世だからこそ大胆に、楽しげに、独自の道を突き進んでいくさまを見せたほうが、そしてそれを自由に顧客が楽しめるような環境にシフトするほうが人々の心はついてきやすい。カッコいいし、たくましく感じてもらえるのです。石橋貴明さんのYouTubeが話題になっているのは、その好例ではないでしょうか。