今年7月、俳優の春名風花さんがSNS上で、自身や両親に対する誹謗中傷や虚偽の内容を投稿・拡散されたとして訴えを起こしていた問題が、投稿者が315万4000円の示談金を支払うことで決着した。
実名でSNSを使用している著名人が誹謗中傷などの被害を訴えることは増えている。今回支払われた約315万円は、こうした誹謗中傷による裁判においては大きい金額であることも注目された。
これまで数々の誹謗中傷に晒されてきたと言う春名風花さん。どうしてこのタイミングで訴えるに至ったのか――。
(全2回の1回目/#2へ続く)
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たった1人の投稿者を割り出すのに「2年弱」
――今回の示談成立の発表は、公式のYouTubeチャンネル『春キャベツ王国』(2020年7月19日配信)でされました。「長かった、本当に長かった……」という言葉が印象的です。
春名 決着したのは今年の7月なんですが、弁護士さんに相談し始めたのは高校生の時です。それから2年弱ほどかかって……。
――2年弱も。そんなに時間がかかるものなんですね。
春名 投稿者を特定するのに、とにかく時間がかかるんです。まずTwitter(以下、ツイッター)に情報開示を申し立てて、ツイートが投稿された正確な日時を示す“タイムスタンプ”を教えてもらいます。そこから投稿者が使っているプロバイダを割り出すのですが、私の場合は候補が4つもあって、全部に発信者情報開示請求をしました。なので、計4回裁判をして、ようやく投稿者を特定できたんです。正直たった1人の投稿者を割り出すのに、ここまで時間がかかるとは思いませんでしたね……。
「そもそもツイッターを辞めればいいじゃない?」
――不特定多数の方々から誹謗中傷を受けていた中で、今回1人の投稿者を訴えたのはなぜしょうか。
春名 最初に弁護士さんに相談したときは、いくつかの誹謗中傷ツイートを見てもらっています。ですが、発信者情報開示請求はなかなかハードルが高いので、認められる可能性が高いものを先生に選んでいただきました。投稿者のツイートは、ウソの情報をこれ以上増やしたくないという理由からすべてを公表していませんが、「彼女の両親自体が失敗作」といったものですね。
――「彼女の両親自体が失敗作」……。
春名 SNSを始めたのは9歳でしたが、その頃から10年も誹謗中傷を受け続けてきて、ずっとどうにかしたいと思ってきました。私に向けたアンチコメント以上に周りの人への誹謗中傷の方が辛い。特に今回は、親に対する誹謗中傷コメントとして許せなかったんです。
よく「そもそもツイッターを辞めればいいじゃない?」と言われますが、なかには“中傷”という言葉だけでは済ませられない、身の危険を感じるものもあります。その度に助けを求めてきましたが、結局“匿名”に阻まれて相手を特定することさえできませんでした。