女性は共感を求めている
ではロールシャッハ・テストで示された男性と女性の違いは、夫婦の関係にどのような影響を与えているのでしょうか。カウンセリングで聞いた具体例をご紹介しましょう。
ある妻は私に「夫が無神経だ」と訴えました。というのも一緒に映画を観に行ったとき、
「ものすごく面白かったね」と妻が言ったのに、
「え? ぜんぜん面白くなかったけど」という反応が夫から返ってきたというのです。
「夫は、そういうところが無神経というか……。せっかく一緒に行ったのに、その一言で気分が台なしになりました」
そのことは夫も覚えていました。
「それから妻はすごく不機嫌になってしまって。映画の後、食事にも行ったのですが、食事中も、帰り道も、ひと言も妻は口をききませんでした。なんで、あそこまで怒ったのかは分かりません。妻には面白かったかもしれないけれど、私は面白いとは思わなかったので、正直にそう言っただけですし」
このとき夫に悪気があったわけではありません。自分が面白いと思わなかったので、率直にその事実を伝えただけです。映画の好みが一致しないなんて、どんな夫婦でもあることです。しかし奥さんは不機嫌になってしまいました。なぜでしょうか。
先ほど、女性は自分の感じたことを口に出したがると書きましたが、それは感情を消化したいという欲求によるものです。
女性の場合、感情を消化する、つまり自分の中で気持ちに区切りをつけるためには、誰かに自分の感情を伝えて、その感情に共感してもらうプロセスが欠かせません。
ここで挙げたケースでは、「面白かった」という自分の感情を伝えたのに、夫がそれに共感してくれなかったことで、妻は映画についての感情が消化できず、胸の中にもやもやした思いが残ってしまいました。そのうえ自分の言葉を否定されたことで、マイナスの感情まで浮かんだため、不機嫌になったのです。
では、こんなとき女性はどんな行動を取るでしょうか。
この妻は翌日、女友だちとランチに行ったそうです。
「昨日、ものすごく面白い映画を観たんだよね」
「そうなんだ。じゃあ私も観に行こうかな」
女友だちは、こう言ってくれたそうです。そして、
「なのに主人は全然、面白くなかったっていうの」
と、グチをこぼしたところ、
「えー、旦那さんひどいね」
と言ってくれたとか。その後も、映画の話と夫のグチで盛り上がり、気持ちはすっきりしたそうです。友だちが映画の感想に共感してくれた上に、面白そうと興味をもってくれたので、「やっぱり面白い映画だった」と自分を納得させることができました。その上、夫への怒りにも共感してくれたので、「やっぱり夫はひどい」と確認できました。
こうしたプロセスを経て、心に浮かんだ一連の感情を処理することができたのです。