〈幼い頃の記憶は、どれもひとりでいたことが多い。ゆえに、ちょっとしたトラウマとなり、これまで敢えてひとりぼっちで過ごすことを避けてきたように思う〉
9月15日で樹木希林(享年75)が死去して2年が経った。空前の樹木希林ブームが落ち着いてきた頃、新型コロナウイルスが世界中を襲い、ひとり娘の内田也哉子はかつて母と暮らした二世帯住宅で、現在、夫と3人の子と暮らしている。
「長女はニューヨークの大学なんですね。留学生は割と早い時期に帰国させられたので、こちらで時差と格闘しながらオンライン講義を受けています。学生寮が医療従事者の方たちの寝泊まりに使われるので、部屋を空っぽにして出てきたんですって。(中略)そういうわけで久しぶりに家族5人、家の内にギュッと閉じこもっています」(『週刊文春WOMAN』2020夏号の中野信子との対談より)
幼少期のひとりぼっちとは一転、コロナ禍での家族との濃密な時間。しかし母の三回忌を前に、夫・本木雅弘の提案で一泊二日のひとり旅に出て、家族の歴史を振り返る様子が、本日9月24日発売の『週刊文春WOMAN』2020秋号のエッセイ連載「BLANK PAGE」で綴られる。
〈「ひとり旅してみたら?」
エッセイのテーマを模索する私に、夫が思いがけないひとこと。
(中略)彼が家を切り盛りできる日程を差し出してくれた。〉
〈いざ、母の遺した愛車に乗り込み、生前あらゆる所へ連れて行ってもらった車のハンドルをぎこちなく握る。ふと、子どもの頃、夜中に目を覚まし、まだ仕事から帰ってきていない母を、声が嗄れるほどベッドで呼び続けたことがよぎる。あんなにひとりが怖かったのに、こうして今ひとりになろうと家から遠ざかる44歳の自分。〉
一泊二日の道中、母との記憶に思いを馳せつつ、今年で結婚25年の銀婚式を迎える夫と「新たな家族」を築いてきた道のりを思う。
〈十歳年上の夫は自ら「きっと私は先に死ぬから、あなたは余生を謳歌できるよ」と不気味だか親切だかわからないことを呟く。そして、私は成人する子ども達には鬱陶しがられぬよう、程よい距離を保って過ごしたいと常々思っている。とすれば、きっといつかまた私はひとりぼっちになるだろう。〉
樹木希林は生前、「人間は、当たり前にみんな孤独」とよく言ったのだという。仏教では四十九日の法要を境に、故人は成仏するとともに来世の道が決まると言われている。三回忌は、十回あるといわれる死後の裁きの中で一番最後に訪れるものだ。
内田也哉子が今回のエッセイにつけたタイトルは「Driving Alone」。それぞれの人生の孤独は続く。
【週刊文春WOMAN 目次】香取慎吾 横尾忠則、三谷幸喜との連続対話/岡村靖幸×オードリー・タン/稲垣吾郎×阿部智里/チョ・ナムジュ×海野つなみ/松本隆の韓流ドラマ論
2020 秋号
2020年9月24日 発売
本体500円+税
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