一帯に広がる無数の古墳
中百舌鳥駅をはじめとするこのあたり、“百舌鳥”と名付けられた地域一帯には大小の古墳が無数に点在している。有名どころでは最大級の大きさとされる大仙陵古墳。仁徳天皇が眠っているとされる。そうした地域だけあって歴史も古く、『日本書紀』にもその名が見られるようだ。仁徳天皇の時代、陵墓造営中に迷い込んで死んだ鹿の耳からモズが飛び去った、という逸話が地名の由来。そんなことまで『日本書紀』に書かれている、ナゾどころか由緒ありまくりの街なのである。
というわけで、せっかくならば大仙陵古墳も見てみようかと南海高野線に乗ってふたつ隣の三国ヶ丘駅までやってきた。この駅は、JR阪和線との乗換駅である。ついでに阪和線も、と見てみるとここでまたナゾの終着駅を発見してしまった。行き先表示に、「鳳」と書かれているのだ。鳳、おおとり、すなわち鳳凰である。伝説の不死鳥、フェニックス、火の鳥である。手塚治虫である。とてつもなく縁起の良さそうな名を持つ鳳駅。中百舌鳥駅が由緒正しき由来を持っていたように、きっと鳳駅にも何かがあるに違いない……。
「鳳」には何がある?
そこで阪和線の各駅停車に乗り込んで三国ヶ丘駅から約10分。右手に大仙陵古墳の生い茂る緑を眺めつつ、あっという間に鳳駅に到着した。こちらも所在地は大阪府堺市。この駅で天王寺方面に折り返す列車もある駅だけあって、大きな島式ホームが2面。さらに東羽衣駅までちょろっと東に伸びる支線用のホームもあり、3面5線という立派な駅である。さっそく、外に出てみよう。橋上駅舎のコンコースは比較的小ぶりだが、東側には大きなロータリーが見える。
ロータリー側に出ると、客を待つタクシーや線路沿いに小さな祠。駅前広場に小さな祠があるというのも歴史ある街だからなのだろうか。そして朱色のどデカいオブジェがロータリーの一角にそびえていた。なにか由緒のあるものなのだろうか。
そう思って調べてみると、タイトルは「祭冠」。堺市のホームページによると、「大地から足を延ばした垂直と手を広げたような水平を巧みに組み合わせた力強い表現で、鮮やかな朱色は祭りに対する人々の気分の高まりや熱いエネルギーを感じさせる作品となっています」とか。つまりはかなり賑わうお祭りでもある街なのだろうか。