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新型コロナは地方政治と生活の密接さを再認識させた
――『地方選』は世の中がコロナ禍によって市町村の役場と生活が密接だと再認識したことを意識した本になっています。
常井 コロナ禍をきっかけに、身近な自治体の大切さを感じたひとは多いと思います。
マスコミは東京の小池さんや大阪の吉村さんなど都道府県の知事を取り上げるけども、実際のところ、コロナに限らず、住民が自分の抱えている問題をどうしようっていうときは、法的な権限の有無とは関係なく、とりあえず、市町村の役所に向かいますよね。そういうときに住民の問い合わせが殺到して混乱してさばけなくなったり、頼りにならなかったりしたら、たいへんなことになります。
――国が平気でトンチンカンなことを推し進めることも露呈しました。
常井 コロナ対策でいえば、国がいっていることと生活の場で必要なことが違うことがある。学校の休校やマスク、給付金に関して政策を変えるには 身近な市町村のリーダーが国にしっかりと異議を唱えるチカラがないと、国主導でやられてしまうわけです。
だから多くのひとは、なんでも国主導で進むことの怖さを、今回のコロナ禍によって知ったのではないでしょうか。
まさにいま菅さんが改革思考で地方にメスを入れようとしているのですが、それが地方の現実にマッチしていないときに、この本に出てくるような国の方針に抗え、独自の延命策を探った町や村があるというのがひとつの教訓になると思います。
撮影=杉山秀樹/文藝春秋