少し前、幼い男の子の体をリアルに再現した「ショタラブドール」のルポ漫画が、インターネット上で批判の的になっていた。
このルポ漫画自体の是非については論旨からずれるため言及を控えるが、問題なのは、「ショタラブドール」を購入して性的な満足を得る行為、または小児性愛者に対して「気持ち悪い」「こういう人間はいつか現実でも事件を起こす」といった差別的な批判が公然と行われていたことだ。
小児性愛者、引きこもり……『予備軍』に向けられる差別
自分たちの理解が追いつかない、価値観が大きく異なるなど、いわゆる「マイノリティ」と呼ばれる人たちのことを、大衆が「犯罪者予備軍」として排除しようとする動きを、これまでに何度も目にしたことがある。
例えば、2019年に発生した「川崎市登戸通り魔事件」、「京都アニメーション放火殺人事件」の容疑者がどちらも引きこもりの中年男性だったことから、ニュースでは連日「引きこもり」といった属性ばかりが取り上げられ、さも「引きこもり」が犯罪者予備軍であるかのような偏見を助長する報道が次々になされたことは、みなさんにとっても記憶に新しいかもしれない。
他人に理解されづらい性的指向を持つ人や引きこもり、社会的少数者とされる人々が、誰にも危害を加えず「社会の一員」として共存する意思を持っているにもかかわらず、偏見や差別によって社会参加の機会や居場所を奪われることは、現在の日本でも決して少なくない。
犯罪を起こせばもちろん罰を受けて然るべきだが
小児性愛自体がそもそも「治療の対象なのか」という論点において、私は「そうではない」と考えている。こうした性的指向は、決して「病気」や「異常なこと」ではない。一方で、心理士である知人のもとへは、小児性愛者など、世間的に理解されづらい性的指向を持つ人々がときどきカウンセリングに訪れるという。
日本では性的同意能力のある年齢の下限が13歳とされており、12歳以下の子どもとの性交渉はたとえ本人の同意があったとしても認められていない。もちろんこれは当然のことであり、議論の余地はない。
「小さな子どもにしか性的興奮を覚えられない」人は、欲望のままに子どもと性行為をすることはもちろんできないし、衝動を合法的に叶えることもできない。もちろん、身勝手な欲望で子どもに危害を加えることもしたくないし、する気もない。できれば「普通に」大人を好きになって、結婚して家庭を持ちたい。
そんな風に「自分の性的指向をどうにかして『矯正』したい」と助けを求めて「治療」に訪れる人が、少なからずいるのだという。彼らは自分の性的指向を他人に知られないよう、息を潜めて生きている。
もしも知られてしまえば自分たちがどんな目に遭わされるのかを、痛いほどに理解しているためだ。