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父はヤクザ、母は自死…「機能不全家族でした」顔色ばかり窺っていた高知東生の幼少期

高知東生さんインタビュー #1

2020/10/04
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母の死、手元に残ったのは一枚の写真だけ

 中学からは全寮制の中高一貫校・明徳義塾に進学するも、高校卒業の目前、母が突然、自ら命を絶つ。理由はいまだにわからない。母と息子の暮らしは通算してわずか2年ほどで終わりを告げた。形見のほとんどはいつのまにか叔父たちの手に渡り、高知さんのもとには一枚の写真だけが残った。

「任侠の世界で育ったことや、お袋が自殺したことは全部、自分にとっては恥だったんです。だからそのことに触れようとも思わなかったし、ずっと避けてきた。しかも “中井啓一の息子”として育ってきたのに本当の父ではなかったことも母が死んだタイミングでわかって。自分のせいではないとはいえ、周りに嘘をついているような罪悪感も抱えることになりました。

 50も過ぎて薬物で捕まったことがきっかけで過去を振り返ってはじめて、自分の生育環境の異常さが理解できました。こうして自分が恥だと思っていたことを明かすことで人の役に立つなら、それは価値になる。だから今辛い思いを抱えている人には誰かにさらけ出してほしいなと思うけど、人って、愛しているからこそ嘘もつくし、言わないこともある。難しいですよね」

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覚醒剤に手を出した理由は、「認められたかったから」

 荒れた青春時代を送った高知さんは20歳で上京し、はじめて覚醒剤に手を出した。理由は「他人から認められたかったから」だった。

「高級車に乗って、デカい家に住んで、うまいもん食べて、理想の女性を手に入れる。そんな成り上がり根性だけで高知の山奥から東京に出てきました。バブルという時代性もあったでしょう。AVプロダクションの社長業に乗り出し、20代の早いうちにすべてコンプリートできたんです。一晩で700万円を使ったこともありました。

 そんな僕が上京直後、ツテで入り込んだディスコのVIPルームで覚醒剤を回しているところに居合わせました。

 日本で一番流行っているディスコのVIPルーム。大企業の御曹司や有名大学の学生といったきらびやかなメンツ。そんな彼らがいかにもトレンディな感じでクスリを楽しんでいる……。彼らの、その場の一員になりたいと強烈に思いました。