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「ビクッとする。フラッシュバックも」覚せい剤で逮捕の高知東生が今、マスコミに思うこと

高知東生さんインタビュー #2

2020/10/04

 2016年に覚醒剤取締法違反罪などで有罪となり、先月、4年の執行猶予が明けたばかりの高知東生さん。取材日前日には俳優の伊勢谷友介氏が大麻所持の疑いで逮捕され、本稿を書いている9月下旬には元TOKIOの山口達也氏が酒気帯び運転で逮捕されたことから、「アルコール依存症ではないか」という見立てが強まるなど、「依存症」をめぐる報道はあとを絶たない。

 9月に自伝『生き直す』を上梓し、現在、Twitterなどで精力的に依存症の啓蒙活動に取り組む彼に、回復に必要なものや、昨今の依存症報道のあり方について聞いた。(全2回中の第2回/第1回から読む

 

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薬物の報道を見ると、ビクッとするし、フラッシュバックもする

「芸能人の方が逮捕された報道を見るとビクッとするし、自分のこともフラッシュバックします。ただ自分の経験で言うなら、犯罪を犯したことは事実だから、犯罪者なのは間違いありません。でもマスコミは、真実から離れた報道で間違いを犯した人をコテンパンに叩きのめすだけ叩きのめして終わりにしてしまうでしょ。

 俺みたいな薬物依存症患者に限らず、なんか生きづらいなって思っている人、いっぱいいるはずですよ。でもそんな人たちがなぜ辛い思いを抱えるようになって、どうやってどん底から前に進もうとしているか、そういった希望に向かう話は全然、取り上げてもらえないんです。

 法を犯した芸能人を叩いて面白おかしくストーリーを作り上げるだけ。回復するために必要なことや、回復した先の人生がどうなるかが分からないと回復への希望が持てないし、メディアにはそういった『良くなるため』の情報提供をして欲しい」

 2016年7月下旬に保釈された後は絶えず記者にマークされて不便な生活を強いられ、報道にも追い込まれた高知さんは、自殺を考えるようになった。

生き直す 私は一人ではない』(青志社)

 ギリギリの状態にあった高知さんを自助グループに繋いだのが、自身もギャンブル依存症から回復した当事者である、ギャンブル依存症問題を考える会の代表・田中紀子さんだった。

高知東生さん(左)とギャンブル依存症問題を考える会代表・田中紀子さん(右)

 田中さんも、日本の依存症報道のあり方に警鐘を鳴らす。

「そもそも薬物やアルコール依存症患者のイメージ映像は廃人みたいなものばっかりで、まったく正しい報道がされていません。伊勢谷さんのことも、彼のユニークな言動ばかりにフォーカスして、まるで頭が狂ったジャンキーだから大麻をやるんだ、と言わんばかりのVTRをワイドショーが仕立て上げていましたが、多くの依存症の人は見た目も含めてもっと普通です。

 何も道に外れた人が依存症になるわけじゃなくて、一般の、どこにでもいるような人が依存症になってしまうのが現実なんです。それにもかかわらず、誤解と偏見に満ち満ちた報道のせいで依存症の正しい知識がまったく伝わっていません。

 アルコールやクスリから抜け出したくて本当に苦しんでいる人たちが、『これがバレたらとてもじゃないけど社会で生きていけない』と、バッシングを恐れて声を上げられない。だから重症になって底まで落ちてからじゃないと声をあげられず、支援に繋がれなくなっているのが現状なんです」