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「ビクッとする。フラッシュバックも」覚せい剤で逮捕の高知東生が今、マスコミに思うこと

高知東生さんインタビュー #2

2020/10/04
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心の防弾チョッキを脱いでからは、ただただ、泣きました

「マスコミに書き立てられたあれこれが恐怖になっていて、正直、ここで言ったことが原因でまたどこかに閉じこもらなくちゃいけないんじゃないかと怯えていたんです。

 そんな俺に対して松本先生は辛抱強く、手を変え品を変え依存症の話をしてくれて、凝り固まった自分の気持ちをひとつひとつ溶かしてくれた。たぶんずっと同じことを言ってくれたと思うんですけど、あるときストンと『あ、俺って病気なんだ』って腑に落ちる瞬間があったんです。

 そうして心の防弾チョッキを脱いでからはどれくらい先生の前で泣いたかな……。覚えていないけどただただ、泣きました。2週間に1回通っていましたけど、本当だったら自分はもっと先生と話したかった。でもそれもマスコミが四六時中張っているので叶いませんでした」

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 薬物依存症であることを認めた後、高知さんは前述の田中さんから「12ステップ」のプログラムをすすめられ、取り組んでいる。

 依存症の自助グループで行われるこのプログラムは、アルコールや薬物、ギャンブルなどさまざまな依存症患者に有効な回復プログラムのひとつとして知られ、世界の140カ国ほどで使われているという。

 高知さんは現在、12ステップ中の「ステップ9」に向き合っており、あと数ヶ月で最終ステップというところまで回復した。

自助グループに参加すると、「案外みんな同じことで悩んでるんだ!」って

 今は、清原和博さんや元NHKアナウンサーの塚本堅一さん、元NHKうたのお兄さんの杉田あきひろさんも参加する、芸能人の自助グループを主宰している。9月22日には、山口達也氏逮捕の報を受け、ツイッター上で自助グループへの参加を呼びかけた。

 

「自助グループで話を聞いていると、案外みんな同じことで悩んでるんだ!と思えるんです。それまでずっと、こんな悩みを抱えているのは自分だけだと思っていたから、どれだけ心が楽になったか。

 これまでは人と話をしていても、どこかに自分の欲があったりパワーゲームがあったけど、今は純粋に相手の立場に立って、俺ができる改善策を一緒に考えてあげられるようになりました。

 助ける人が助かる。それが依存症の回復プログラムの仕組みで、俺自身、依存症から立ち直って社会で立派に活躍している先輩たちがいるから、希望に向けて今、歩いて行けています。

 今後の人生は諸先輩方からもらった恩を返していけたら、って思ってるんです」

 高知さんの回復の歩みは続く。

撮影=深野未季/文藝春秋

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2020年9月4日 発売

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