ゲームが終わり、監督室に戻ると指揮官は「勝って良かった」としんみりと呟いた。珍しい事だった。勝っても浮つく事なく、負けても落ち込む姿は決して見せない井口資仁監督が安どの表情を浮かべていたのだ。10月7日のバファローズ戦でマリーンズは4-1で勝った。ファンの想いが後押ししての勝利。監督に就任して180勝目は特別な勝利となった。
ただの1勝ではない。新型コロナウィルス陽性判定を受け選手7人が登録抹消。4人が濃厚接触者と判定され、大幅入れ替えを余儀なくされ迎えた試合だった。
瞬く間に広がりを見せた女子大生の行動
優勝争いをするチームに暗い影を落とす。そんな状況で支えてくれたのはファンだった。外野スタンドには「コロナ禍を共に乗り越えよう」「今こそ心ひとつに戦い抜こう」の横断幕が掲げられていた。6日、Twitter上に「#コロナに負けるな千葉ロッテ」のハッシュタグが溢れ、一時はトレンドの国内1位に入った。タグを作ったのは千葉県在住の女子大生。
「夜、眠りにつきながら私たちファンにも何かできることはないかと想いました。私たちファンの心の中にある選手への想いをこのタグに載せて沢山の人と共有していけたらいいなあと思い翌朝に行動に移しました」と語る。
6日の午前6時半に思い立ち、実行に移した。女子大生の行動は瞬く間に広がりを見せた。マリーンズファンだけでなく他球団ファンも投稿。ある喫茶店はラテアートでエールを送ってくれた。その一つ一つのメッセージを試合前の井口監督はずっと監督室で見ていた。
「ありがたい。心に響いた。ファンの皆様の気持ちがボクたちマリーンズを後押ししてくれた。勇気をくれた。改めてマリーンズファンの素晴らしさ、一体感を実感した」と日本一のファンに感謝をした。