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井口監督が試合前の円陣で放った熱い言葉

 高部瑛斗外野手はファーム9月の月間MVP賞を受賞して一軍に乗り込んだ。9月はイースタン・リーグにて17試合に出場しリーグトップの28安打を放ち、9試合連続ヒットを含むマルチ安打を11度記録。更に9月度は打率.431(リーグトップ)、5盗塁(リーグ2位タイ)と好成績を残し虎視眈々と一軍昇格のチャンスを待っている時に連絡が入った。

「状態が良かったというよりは一日一日、絞り出したという感じです。毎日、全力で出来ることをしっかりとやった結果だと思っています。一軍でもこのチャンスを生かせるように結果を出したいです」と高部は張り切った。プロ初スタメンとなった10月6日のバファローズ戦では山本由伸の前に4打数無安打も、9日のホークス戦で代打で登場すると4番手高橋礼から左前打。嬉しいプロ初安打を記録した。ベンチに戻った高部は「ガムシャラに打ったので打ったボールは分かりません。やっと1本打つことができました。素直に嬉しいです。これからたくさんヒットを打ち続けられるように頑張っていきます」と初ヒットの記念のボールを先輩たちから渡され、笑顔を見せた。

 マリーンズには若手が躍動できる土壌がある。その空気は指揮官が作っている。21歳の安田尚憲内野手は7月21日のライオンズ戦(メットライフD)から4番に座ると現在に至るまで4番を打ち続けている。打てない時はある。それでも動かない。信頼し使う。そして言う。「打てない時もある。壁にぶつかる時もある。それはもちろん分かっている。でもその壁を彼は乗り越えられると思っている」。若手が育つには時間がかかる。我慢が必要だ。そして井口監督にはそれが出来る忍耐力がある。そして動じない。だからマリーンズの若手はイキイキとしている。そしてなによりも普段は多くを語らない指揮官が、ここぞの場面で投じる言葉は熱く、心に響く。試合前の円陣で放った言葉「レギュラーをとっちゃえ!」。合流したばかりの二軍選手たちにとって、これほど励みになる言葉はなかったはずだ。一軍選手が大量離脱の窮地をピンチではなくチャンスと捉え前を向いた指揮官。そのマネジメント力と何事にも動じないリーダーとしての立ち振る舞いは際立っている。だから今年のマリーンズは強いのだ。1974年以来、46年ぶりのリーグ1位での優勝に向けて邁進する。

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梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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