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“実は観光しづらい”瀬戸内の島々 JR西日本が出した意外な解決策とは

2020/10/05
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 瀬戸内の島の魅力を打ち出していくにはふたつのポイントがあるという。ひとつは、今までは効率的に巡ることが難しかった島々にも渡れる周遊ルートをつくっていくこと。もうひとつは、島々を訪れた観光客が楽しめるようなコンテンツ作りを加速させていくことだ。このきっかけのひとつになったのが、2018年に販売した「せとうち島たびクルーズ」という旅行商品。

高速クルーザー「シースピカ」を作るきっかけは2年前に遡る(筆者撮影)

「このときには瀬戸内海汽船さんがお持ちの『はやしお』という90人乗りの高速船を使わせていただきました。定期船が点検のためにドック入りする際に用いる、いわば予備の船ということで、年間70~80日ほど稼働していない時期があるんです。それを借りまして、東京・名古屋・大阪・福岡という4大都市圏からの新幹線往復をセットにしました。これがとても好評で、アンケートでは『写真とかでよく見ていて行きたいけどなかなか行けなかったところに行くことができた』という声もたくさんいただいた。そこで、本格的に取り組んでいこう、となったわけです」

専用船が必要だと痛感

 瀬戸内の島を訪れるには、本土各所にある港から船に乗ることになる。ただ、すでに述べたとおり、これらの船は地域の人が利用する前提でダイヤが組まれており、観光利用には多少不便を感じることも多かった。また、歴史的な経緯から小規模な事業者が多数存在しており、周遊観光ルートを構築することが難しい事情もあったという。

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 結果、瀬戸内の外から観光客を集めて安定した観光誘致をするためには“新たな専用の船”が必要だという結論になり、そこで誕生したのが、この秋に就航した観光型高速クルーザー『SEA SPICA(シースピカ)』である。

2階だての船体。定員は90人(筆者撮影)

「2018年の『島たびクルーズ』で専用船が必要だと痛感し、その年の秋から構想を詰めて、運航のノウハウを持っている瀬戸内海汽船さんや、地域の事情を把握している国交省の中国運輸局さんとともに連携協定を結びました。そのうえで、新造する船を保有する会社を設立して、観光に特化した新しい船の建造に入っていったというわけです」