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“実は観光しづらい”瀬戸内の島々 JR西日本が出した意外な解決策とは

2020/10/05
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 瀬戸内はいいところだよ、とよく言われる。気候は温暖で海の幸に恵まれ、“瀬戸内レモン”などの特産品も多い。工業地帯が連なる沿岸の都市の風景も悪くない。呉線の車窓からみる景色はとりわけ好きな風景のひとつだ。明媚な島々を眺めていると頭の中に流れるのは小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』……。確かに、瀬戸内はいいところである。

瀬戸内は温暖な気候で風景も綺麗な一方、観光となると実は意外なハードルも…(筆者撮影)

 ただ、広島出身という編集担当者が言う。

「こっちに観光に来る人ってだいたい原爆ドームと宮島、スポーツ球団。あとは呉の戦艦大和くらいで終わっちゃうんですよね。瀬戸内の小さな島をめぐるのは結構大変なんで……」

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 この言葉もまさにそのとおり。「瀬戸内海には小さな島々が無数に点在していて、ウサギがいたり猫がいたり、とにかく楽しいところばかり」とはよく耳にするのだが、なかなか行く機会がないのである……などという話をJR西日本の人に向けてみた。

実は観光が難しい瀬戸内の島々

「確かにそうなんですよ。瀬戸内の島はほんとうにいいところばかりで、観光地としてのポテンシャルも高い。でも、その島に渡る船は地元の人たちが本土に出るときに使う日常の脚。船の時刻表を見てもそうなっていて、なかなか観光では利用が難しいところが多いんですよね」

観光地としての瀬戸内の島々は、ポテンシャルは高いものの、そのアクセスがネックにもなっていた(筆者撮影)

 答えてくれたのは、JR西日本営業本部でマーケティング戦略を担当している内山興さん。

「数字で見ると、瀬戸内エリアには山陽新幹線で年間約400万人の流入があるんです。いま、当社ではそれを15万人ほど増やせないかと、『せとうちパレットプロジェクト』という観光促進のプロジェクトを進めています。その中心はやはり広島かなというところなんですが、ご指摘のとおり400万人が原爆ドームなどといった特定の場所までは来ているものの、そこからもう一歩先まで足を延ばしてもらいたい。瀬戸内の島の魅力を打ち出していくことで、もっと増やせるのではと思っているわけです」