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辻希美が振り返る、バッシングを受けても「母親らしくない」スタイルを貫いた理由

彼女がそこにいる理由——ジェーン・スー

「ママゴト婚」とバッシングされた19歳での結婚

 コアファンの見立てとは異なるだろうが、私のような外野からは、卒業後の滑り出しは順調には見えなかった。期待度の高かったW(ダブルユー)の活動は休止し、フットサルチームからも離脱。本格的なソロタレントとしてのキャリアを開始して間もなく、19歳で俳優の杉浦太陽との結婚を発表。おなかには第1子がいた。

 当時、現役人気アイドルの結婚は、早すぎる「ママゴト婚」と揶揄され、スキャンダラスに報じられた。辻の母も祖母も、第1子を20歳で出産していたことなど、世間は知る由もなかった。

夫の杉浦太陽さんと(公式ブログより)

 出産のあともマスコミは容赦がなく、母親らしからぬ服装だ行動だなんだと、辻バッシングが続く。

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「でも、自分が選んだ道っていうのもあったし、迷惑をかけてまでもこっちを選んだので、私はこれをがむしゃらにやらなきゃいけないっていうのがありました。ただ、世間に認めてもらいたい気持ちはなかったですね。もう、お仕事もできないだろうと思っていたので」

 出産当時の辻は20歳だが、仕事を始めたのは12歳だ。新卒で8年間必死に働いた女性が最初の育休で感じる不安を、辻も抱えていた。

「結婚当初は旦那さんも泊まりの仕事が多かったので、留守が多かったんです。ゆっくり2人で話す時間はそんなになかった気がする。最初の1年半ぐらいは本当にしんどかった。洗濯もしたことなければ、料理もしたことなかったので必死でした。当時はスマホもなくて、クックパッドも見られなかった。料理は本を見たり、お母さんに電話したり。料理本はいっぱいあって、開いて作ったページがすごい汚れて(笑)。つぎ作るのに文字が見えないとか、しょっちゅうありました」

「セール品のシールが貼ってあるのを買っていいのかなって(笑)」

 いまほどSNSが盛んではなかったため、同じ悩みを抱える仲間に出合うことも難しかった。

「その頃は母もちょっと離れて住んでいたので、悩んだときにすぐ会えることもなく。同じような環境の友達もいなかったので、しんどかったですね。友達に電話しても、昼間は寝てて、夜は飲みに行ってる。20歳超えてね、みんな。成人式もあったり。ほんとにきつかったんですよねえ」

illustrations:Keiko Nasu

 昔を懐かしむように、辻は笑みを浮かべて話す。しかし、モーニング娘。時代に続き、またしても、同世代と同じ日常を過ごせない生活が始まってしまったわけだ。

 息が詰まることもあっただろう。

「スーパーに行っても、セール品のシールが貼ってあるのを買っていいのかなって(笑)。いつ見られてるか、いつ撮られてるか分かんない生活だったので、買ったら言われちゃうのかなとか、そういうのはありました」