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2020/10/08

エディは「落語界の志ん朝・談志」

 落語の歴史は「古典落語」という言葉が生まれる以前とそれ以降とに分かれる。戦後の高度経済成長期、落語で描かれてきた庶民の暮らしが過去のものとなっていく中で、古き良き落語の伝統は「古典落語」という造語で守られることになった。江戸以来の流れを受け継ぎながら、新時代に「古典落語」と呼ばれることになった芸能を確立したのが志ん生、文楽といった「昭和の名人」だ。

 ヘンドリックスやクラプトン、ブラックモアといったプレイヤーは、ギターという楽器の長い歴史を受け継ぎながら、ブルーズを基盤とする「ロック・ギター」というスタイルを確立した。それを「昭和の名人」が「古典落語」という概念を定着させた事実になぞらえるならば、エディ・ヴァン・ヘイレンは落語史で言うところの古今亭志ん朝や立川談志だったと言えるだろう。志ん朝・談志は「昭和の名人」が確立した世界を、より現代的な方法論で推し進めた「次世代の名人」であり、そのズバ抜けた人気と実力によって圧倒的な影響を後進に与えた。同様に、エディもロック・ギターを「次の次元」に推し進めた「次世代の名人」なのである。

これがエディの代名詞「ライトハンド奏法」 ©getty

2002年5月には「ガンに打ち克った」と宣言

 2001年にバンドの公式サイトで自らがガン闘病中であることを明かしたエディは、2002年5月に「ガンに打ち克った」と宣言。2004年にサミー・ヘイガーを、2007年にはデイヴ・リー・ロスを迎えてのVAN HALEN再結成ツアーを行なったものの単発的な興行に終わり、ファンの間ではエディの健康状態を危惧する声が高まっていた。

 2012年にはVAN HALENとして実に14年ぶりとなるオリジナル・アルバム「A DIFFERENT KIND OF TRUTH」(ヴォーカルはデイヴ)がリリースされて大規模な北米ツアーも実現、翌年には来日も果たしたが、2015年の北米ツアーを最後に活動休止。以来、エディは完全に表舞台から姿を消すことになった。こうした経緯から、「ガン闘病の末に亡くなった」と聞いて「恐れていたことが起きた」という思いのファンは多いはずだ。正直、「全く予想しなかった」ことではない。だが、現実になってほしくなかった。あまりに悲しい。

カリフォルニアで展示されているヴァン・ヘイレンの愛用ギター ©Ringo Chiu/ZUMA Wire/共同通信イメージズ
自ら制作したギターは「フランケンシュタイン」と名付けられた

 ガンの再発による闘病生活を送っていた立川談志が亡くなったとき、「あり得る」けれど「あってはならないこと」が起きてしまった喪失感に僕は打ちのめされた。全世界のVAN HALENファンが、それと同じような喪失感を覚えているに違いない。

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