菅義偉首相が、日本学術会議が推薦した新会員候補105名のうち6名の任命を拒否した問題が波紋を広げている。
1949年に設立された日本学術会議は「学者の国会」とも呼ばれ、政府から独立した専門家の立場で、社会のさまざまな課題について提言を行う機関だ。現在の会員は210名。任期は6年で、3年ごとに半数が交代する。
日本学術会議法では、同会議を「独立」した存在と規定し、会員は「内閣総理大臣が任命する」としているが、政府は1983年に当時の中曽根総理大臣が国会で、「政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っている」と答弁。あくまでも形式的な任命制であって総理に任命の拒否権はないという解釈を維持してきた。しかし、今回の問題が起きる前の2018年に、その解釈を変更し、拒否権があるという新解釈に改めたというのだ。そして、その解釈に基づき今回、宇野重規東京大教授、加藤陽子東京大教授ら6名の任命を拒否した。
日本学術会議はあくまで政府に「助言」をする機関
任命拒否の理由は未だに明らかにされていないが、6名はいずれも安倍政権で特定秘密保護法や平和安全法制に反対した研究者でもある。菅政権のこうしたやり方に対して、「学問の自由への露骨な侵害だ」「菅首相は説明責任を果たすべきだ」などと各学会や各研究団体が抗議声明を発表。野党も国会でこの問題を徹底追及する構えだが、果たして今後どう展開していくのか。国際政治学者の三浦瑠麗氏に、今回の問題の「核心」を聞いた。
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そもそも論として私はまず、日本学術会議とはどういう組織かを考えてみる必要があると思います。日本学術会議は独立性が高く、国内の学者の意見を集約して何らかの政策提案を政府に行うことができる組織です。つまり行政の指揮命令系統の中に入っているわけではなく、行政機関の横に配置される、あくまで助言をする機関です。学術会議の会員は、確かに公務員になりますが、特別国家公務員として独立した立場が保障されています。