日本学術会議が全く問題がない組織であるとはいえません。正直にいって自己改革をしないといけないちぐはぐな組織であることは間違いありません。例えば、2000年ごろの日本学術会議の会員の女性比率はわずか1%でした。当時の社会標準に照らしても著しく遅れていたと言わざるを得ない。今はだいぶ改善していますが、自己改革しなければならないことはたくさんある。無駄に権威主義的であり、アカデミア一般の弊害と同様、人脈が重要視されすぎるなど、様々な問題を抱えています。
政府や日本学術会議、国民にとって一番いい解決策
政府は、学術会議が色んな点について問題があるという主張をここにきて盛んに出しています。もともとは「人事権」そのものに関心があったのは明らかですが、組織改革と絡める方向に行くことで、研究内容や政治的見解などのイデオロギー論争に流れるのを避けたのでしょう。学術会議の在り方の問題は、それはそれで改めて考える必要がある問題です。政府は6人の任命を拒否してしまった以上、もはやその人事を完全に撤回することはできないでしょう。しかし、批判の声が大きくなれば、政権運営にも響いてくる。ダメージコントロールの観点からは、行政改革的な理由にひきつけてしっかりと説明するのが正しい選択です。
そうすると、今回の任命拒否に関してはこのまま押し切るしかないという結論になります。しかしそれでは不健全です。そこで菅政権は日本学術会議に対して、組織改革でやるべきことや人事の在り方についてこれから方針を示す必要があります。もし方針がでれば、それに対して日本学術会議から意見が出てくる。そうして新たな学術会議の在り方を検討していく中で、欠員が生じている6人について改めて埋めていく作業が必要になってくるでしょう。そこで時間をかけながら、今回承認しなかった6人を改めて任命していくというのが、政府にとっても学術会議にとっても、そしてひいては国民にとっても一番いい解決策になると私は思っています。