いまから10年前のきょう、2007(平成19)年9月14日午前10時31分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「かぐや」が、鹿児島県の種子島宇宙センターからH-IIAロケットにより打ち上げられた。同探査機の正式名称は「セレーネ」だが、打ち上げ前に愛称が一般公募され、『竹取物語』にちなんだ「かぐや」が選ばれた。

 かぐやはまず地球を周回する楕円軌道に乗ると、各部の機能テストや月への軌道変更に向けての調整を行なった。これは、何らかの問題が生じた場合、地球を回っているあいだならまだ打つ手のある可能性が高いとの判断による(青木満『月の科学――「かぐや」が拓く月探査』ベレ出版)。そうやって慎重を期し、20日間をかけて準備万端整えたあと、10月4日にはいよいよ月を周回する楕円軌道に乗った。それから徐々に高度を下げていき、同月19日には、高度100キロの円軌道に乗る。これが目標としていた観測軌道であり、11月1日には試験観測を開始、12月21日からは定常観測に入った。

 定常観測は翌08年10月31日まで続けられ、さらに09年2月1日からは高度を50キロに下げて観測を開始。最終的には高度10キロまで下げられる。そして6月11日には、残りの燃料をほぼ使い切ったため、月の表側の南半球へ制御落下され、すべての任務を終える。1年以上にわたる観測中、かぐやはNHKの開発したハイビジョンカメラにより、鮮明でリアルな月の姿を撮影し続けた。その映像はテレビでも放送されたので、記憶している人も多いだろう。

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 かぐやには14種類もの観測機器が搭載され、月の起源と進化の解明のため、さまざまな観測を行なった。月の南極では、1年中太陽光の当たらない「永久影(えいきゅうかげ)」を多数発見している。それとともに、永久影の近くに、1年の320日以上、太陽光が当たる場所も見つけた。これは将来の月面基地建設に最適な場所として期待される。

「かぐや」を搭載し、白煙を噴き上昇するH2Aロケット13号機 ©共同通信社