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「私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示」

「薬の種類がわからない」と言っていたが、2019年4月の面会では「酒を飲ませて、睡眠薬と安定剤を飲ませた」と答えていた。「睡眠薬と安定剤」という種類を認識していたが、裁判では答えないだけなのか。それとも、面会時の回答が「嘘」あるいは「勘違い」だったのだろうか。

 事件当初、病院で嘘をついて睡眠薬を処方してもらったとの供述をしたとの報道もあった。精神安定剤は「被害者が持っていたもの」と言っていた。睡眠薬や精神安定剤の違いを認識していた可能性があるが、検察側はそれ以上の追及をしなかった。たとえ、誤報だったとしても確かめる価値はあったのではないかと筆者は思う。なかなか証言をしない白石被告。検察側の質問に答えたというだけでも、弁護側に優位に立てると思わせることができ、詳細な部分は、話さない作戦なのか、と思わされた。

 8月23日には、AさんとAさんの母親がLINEをしている。Aさんは「明日の夜、帰る」と送っている。また、友人と電話をしている。これに関連して白石被告は「私は内容の指示はしてない。私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示したが、電話の内容の指示はしていない」と詳細に述べた。

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 冒頭陳述等によると、白石被告は8月23日、預かった金と所持金を奪う目的で殺害を決意した。Aさんの首を絞めたところ、失神した姿に欲情して、Aさんを姦淫。その後、ロープで首を吊って殺害した。遺体をバラバラにしたが、その方法はインターネットで検索したという。肉片や内臓等は一般ゴミとして処分。頭部はクーラーボックスに隠した。

※写真はイメージ ©iStock.com

「ヒモになろうと思ったんです」

 この日の質問で、捜査段階で供述していないことを引き出したのは、冒頭の裁判員による「殺害を決意したきっかけ」についての質問だった。

 弁護側は、「性交渉を断られたと証言したが、それは、捜査段階では言っていないのではないか。手書きの上申書を含めて、警察の捜査資料には、そのことはない。この質問にも答えませんか?」と質すと、「はい」と言い、白石被告は答えない。ちなみに、Aさんを殺害した理由について、面会ではこう答えていた。

「早く口説けた。お金を持っていることがわかり、ヒモになろうと思ったんです。しかし、他に男がいるとわかった。だとすれば、他の男に行くかもしれない。部屋を出て行けと言われるかもしれない」

 しかし、実は、白石被告はAさんに彼氏がいることを確認していない。裁判で、「なぜそう思ったのか?」と聞かれ、「彼氏がいないという会話はなかった」「男に困っている雰囲気ではなかった」と答えている。思い込みが強いのと、自信のなさからきた判断のようにも筆者には感じられた。裁判官から「Aさんとの関係を続けていく選択はなかったのか?」と聞かれ、「そういう選択もあったが、Aさんをひきつけておく自信がなかった」と答えた。白石被告の素の部分を垣間見た気がした。