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駅伝シーズンに向けて重要な夏合宿が「禁止」に

 大学駅伝チームの夏は、秋冬の駅伝シーズンに向けて、高所や比較的涼しい北海道などで合宿を行なうのが恒例だ。「夏を制する者が箱根駅伝を制す」などと言われることもあるほど夏の走り込みが重要とされている。

 新型コロナ禍の夏、“はたして夏合宿を行えるのか”という懸念は、前期にはどの大学も持っていたが、結局は、感染予防を徹底しながらも、避暑地や高所で夏合宿を敢行したチームがほとんどだった。早大もまた、7月に熊本・水上村で1次合宿、8月中は長野・峰の原高原、新潟・妙高高原で2次合宿、9月中旬からは岩手(奥州、花泉)と山形・蔵王高原で3次合宿と各地を転々とする予定を立てていた。

昨年の全日本大学駅伝は6位 ©文藝春秋

 しかし、春季と同様に、合宿を迎える直前になって、大学の理事会で合宿禁止が決定した。結局、早大は拠点とする所沢で夏を過ごすことになった。本来であれば、朝、午前、午後の3部練習を行うところだが、猛暑の所沢では、従来のようには練習をこなすことができなかった。

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 朝は5時半に練習をスタート。午前中は、エアコンのある部屋にトレーニング器具を持ち込み、各自でフィジカルトレーニングの時間に当てた。午後練習は17時半スタートで、負荷の大きいポイント練習は日が沈んでから行った。また、長い距離を走る練習の日には、山梨・西湖まで日帰りで行ったこともあった。熱中症を考慮し、日が昇っているうちは走ることを控えたため、練習量は例年の6割程度まで落ちたという。

 だが、「合宿地に行ったほうが練習量は増やせるし、質も上げられるので、最初は『なんでうちだけ合宿ができないんだ』という気持ちがありました。でも、だからといって、駅伝でスタートラインに立った時にハンデをもらえるわけではありません」と駅伝主将の吉田匠(4年)が言うように、結果が求められる世界では、夏合宿ができなかったことは何の言い訳にもならない。「自分たちに与えられた環境で、できる限りを尽くそうと話し合いました」と前を向いて、できることに取り組んだ。

今季駅伝主将を務める吉田匠 ©文藝春秋

「新しい常識」で挑む駅伝シーズン 

 今季、相楽監督ら指導陣が学生と話す際に、たびたび用いているのが“ニューノーマル”、つまり、「新しい常識」という意味の言葉だ。

「これからどんどん『新しい常識』『新しい日常』が増えていくと思いますが、自分たちは、それらにいち早く対応していかなければならないと思っています。例えば、今は感染予防のため不要な外出禁止になっていますが、『前まではこうだったのに』と考えるとストレスを感じてしまいます。これが『新しい日常』なんだと考えるしかないのだと思っています」(吉田)