「自分のオタク人生を彩ってきた物言わぬ親友たちの一大同窓会」
そして今回、バンダイの開発陣は、現存するファルコン号の撮影用ミニチュア(全長1.7メートル)と当時撮影された写真を徹底解析し、恐らくは数百~千以上に上るであろう流用パーツの出どころをすべて特定。実際のパーツを一つずつ採寸して正確に約3.5分の1に縮小し、ファルコン号をキット化した。
要するに、今回発売されたミレニアム・ファルコンは、「実際に撮影に使用されたファルコン号のミニチュア」のおそろしく正確なミニチュアであると同時に、「僕たちが子供の頃に作っていたプラモデルの一番かっこいい部品たちの集合体」でもあるわけだ。
バンダイのファルコン号のパーツを見ていると、「あー、これはホーカーハリケーンの主翼!」とか「ここはたぶん、ヤークトパンターの車体!」とか「これはタミヤのDFVエンジン」とか、「これは何かの飛行機キットの着陸用の脚のところ!」とか、どんどん特定できてしまう。
言ってみれば「自分のオタク人生を彩ってきた物言わぬ親友たちの一大同窓会」というノリなのだ。それが寄せ集まって「ファルコン号」という恐ろしくクールな宇宙船になっているという二重の奇蹟!
もう、ファルコン号自体が「自分の人生の集大成がそのまま形になった、究極の合体メカ」に見えてきてしまうほどの感動なのだ(重度のビョーキであることは十分自覚しております)。
ちなみに組み立てに必要なものは、基本的にプラモデル用のニッパー1本(良く切れるものがお勧め)だけ。接着剤さえ不要だ。部品を説明書の指示通りにはめこんでいくだけで、超精密なファルコン号がどんどん組み上がっていく。ほとんどプラモデルを組んだことのない人でもOKなのでは、と思わせるほどだ。不安な人は、バンダイから出ているスター・ウォーズのプラモデルシリーズ(色々出ていますよー)の中から、お好きなキットを一つ組んで、慣れておくとよいかもしれない。
元々、スター・ウォーズという作品自体が、ルーカスが古今東西の神話を研究し、そのいいとこ取りをして創造しようとした「現代の神話」だった。
そう考えると、作品世界に登場するメカたちが、プラモデルという媒介項を通じて「実在するメカたちのいいとこ取り」をしたのは、まさに作品それ自体の成り立ちとシンクロしているわけで、スター・ウォーズという作品を特別な存在にしている数々の「奇蹟」の一端が、ここにも表れていると言えるだろう。
とまあ、こんな風に浮かれ騒いでいたら、さらなる新情報が飛び込んできた。今度はレゴが、史上最大の7541ピースで構成されるミレニアム・ファルコンを発売するとのこと。しかもお値段は800ドル(8万8千円)!
いやあ、これもいいなあ。すごいなあ。欲しいなあ。
プロポーションもいいし、操縦席以外のキャビン(居室)部分まで再現されているのがポイント高いね。各キャラクターのかわいらしいレゴ版フィギュアが付いているのは当然として、「エピソード5 帝国の逆襲」での、ハン・ソロとレイアの、ファルコン内でのラブシーンまで再現できるとは!
こうした高額商品が続々と販売されること自体、ファルコン号の「魔力」と言ってもいいぐらいの強烈な魅力、呪縛力の証明と言えるだろう。
映画「アメリカン・グラフィティ」に隠された“鍵”
なぜ、かくもファルコンは人々から熱烈に愛されるのか。
ここまでは、「立体模型」としてのファルコンの魅力について語ってきた。だけど、これだけでは「ファルコン号の魅力の謎」の一端を解明したに過ぎない。
「巨人の星」で星飛雄馬が編み出した「大リーグボール2号、消える魔球」も、消える原理の80%までは、ライバルたちは簡単に見破ったが、「残り20%の秘密」を解くのが大変だった。ファルコン号の謎解きも、実はここからがキモなのだ。
その詳細は、近日公開予定の後編で明らかにしたいが、少しだけヒントを挙げておくと、ファルコン号の謎にさらに迫る鍵は、ルーカスがスター・ウォーズに先だって監督した映画「アメリカン・グラフィティ」(1973年)の中にある。まじめな人は予習しておいてください。スター・ウォーズをディープに味わおうとする人にとっては「必見の映画」と断言できる。そして何より、とてもおもしろい映画だ。ちょっと古くさいけど(笑)。
えっ!? 「ハン・ソロについてほとんど触れていないじゃないか!」って?
安心してください。ちゃんと後編ではたっぷり論じる予定です。
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