ITから宇宙開発まで幅広い分野で活躍する実業家堀江貴文氏。生涯一捕手を貫き、選手としても監督としても名声を集めた野村克也氏。
全く異なる分野で活躍する両者ではあるが、二人の間には意外にも共通点が多い。情報を武器にし、時間を効率的に使い、積極的に投資する。そして、「好きなこと」をとことん追求する生き様……ここでは両者の「お金」についての考えを『夢中力』(光文社新書)から紹介する。第一線で活躍を続けてきた二人の思想に触れることは、かならずや数々の学びが秘められているだろう。
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【堀江】「カネ」とは、「信用」を数値化したものだ
僕のことを「拝金主義」だと思っているかたがいるかもしれないが、それは違う。儲かれば何でもいいというわけではない。ビジネスが成功するには、人間の熱量や愛情が必要で、それによって人の輪ができる。
そして、カネはそれ自体に価値があるわけでなく、僕の定義では「カネは、信用を数値化したもの」である。というのも、物質的に言えば、紙や金属にすぎないのだから。人間以外には何の価値も持たないのだ。
「信用」とはあいまいなものなので、面識も交流もない人と信頼関係は結べない。だから「カネは信用の代替物」であり、「信用」を交換する便宜的な道具であるわけだ。簡単に言えば「1円」より「1万円」のほうが、信用度が高いということ。
だから、ビジネス的に語るなら「借金がたくさんある人」は、換言すれば「信用がある人」だ。信用のない人には融資できないからだ。
僕自身は「カネを貯める」より「信用を積み重ねる」ことに意義があり、「カネ自体は使うためにある」という信条だ。
【野村】「銀座で飲む」というモチベーションで三冠王獲得
プロ野球選手には、シーズン終了後に「契約更改交渉」というものがあります。かたや「選手」、こなた「球団社長」「査定担当」「経理部長」の3人。
・査定担当「2年連続10勝。君の年俸は今年4000万円だから、来年は45%アップの5800万円だ」
・選手「50%アップの6000万円まで、もう200万円上げてもらえませんか」
・球団社長「10勝はしたが、途中、肩を痛め、1か月2軍落ちした。でも、頑張ったことは認めているから中間を取って5900万円でどうだ。経理部長、全体予算に余裕はあるかな」
こんな具合です。今年肩を痛めたから、来年も痛めない保証はない。もしかしたら肩痛で1年すべてを棒に振って0勝に終わるリスクもはらんでいる。選手にとっての「年俸」は「信用度」なのです。