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好成績を挙げるモチベーションが「カネ」だった

 往年のプロ野球界を代表するキャッチャーが2人います。セ・リーグの森昌彦(祇晶=巨人→西武監督)、パ・リーグの野村克也(南海)です。

 2人とも家庭の経済的事情で大学進学を断念したところが共通点。性格は「森は節約家」、「野村は浪費家」。私は高校時代、ポケットに1000円も入っていない。貧乏だった反動か、あり金はすべて使ってしまうタイプでした。

 でも、「やりくり」リードは私のほう。ピッチャー側からは「森は一流投手を気分よく投げさせるリード」「野村は二流投手の長所を引き出すリード」と評価されました。

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 私の父親は戦死し、母子家庭。私はプロ入り後、何とか母親に楽をさせたい一心で、貪欲かつ必死にプレーしたのです。

 日本で初の「1億円プレイヤー」になったのは落合博満(86年ロッテ→87年中日)だと言われていますが、実は私です。それより10年以上前、私はプレーイング・マネージャーだったので、「選手の年俸」+「監督の年俸」をいただいていたのです。

 プロ野球選手は年俸を月割して、月給としてもらいます。当時は封筒に入れての手渡しで、私の場合、机の上で封筒が立ちました。

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 私はそのお金を持って銀座や北新地に飲みに走りました。と言っても酒は飲めないので女性を口説きに行ったのです。「英雄色を好む」と言うでしょう。逆に私は色を好んで英雄になろうとした。なれませんでしたけれど。

 私の選手時代は「銀座や北新地で飲む」ことが一種のステータスだった。そのステータスのためにはカネが必要。カネを稼ぐためには好成績を挙げる。そういうモチベーションが私を「三冠王」にさせたのだと思います。

〈結論〉

「信用」がなければ「カネ」を融資できない。実力の世界であるプロ野球界も同様で、選手の「契約更改交渉」は、その最たるものである。

夢中力 (光文社新書 1091)

堀江貴文 ,野村克也

光文社

2020年10月14日 発売