飲食店の売上回復の見通しが立たない。

 帝国データバンクによると、2020年の上半期(4月~9月)の飲食店の倒産件数は392件。上半期としては過去最高となった。個人事業主の廃業や休業も含めれば、さらにこの数字は膨れあがる。補助金や銀行の借り入れでなんとか凌いでいる店舗も、年明けに資金が底をついてしまうところが少なくないはずだ。

「都内でも休業案内の張り紙が出ているお店が目につきます。でも、よくよく見ると7月末や8月末など、すでに休業期限が過ぎているところが多いんです。夜逃げしてしまった飲食店も多いと思います」(経済誌記者)

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 様々な業種で大きな打撃を与えている新型コロナウイルス。しかし、その中でも人と人が密に接する飲食店への影響は大きい。実際、私のところにも例年になく飲食店の経営相談が増えている。しかし、売上をV字回復させられるような打開策は未だに見つかっていないのが現状である。

人と人が密に接する飲食店へのコロナショックは甚大だった。光明はあるのだろうか

1ヵ月30回以上利用する「定期券」ユーザーも

 そのような厳しい状況下で、新たな取り組みで業績回復に向けて動き出している飲食店がある。東京都内で32店舗を展開するラーメン、定食チェーンの「福しん」だ。2020年1月からスタートした「福しんギョウザ定期券」が話題を集め、お客様の囲い込みに成功しているという。

業績回復の原動力となっているというギョウザの「サブスク」。実際に試してみた

 サービスの仕組みは非常にシンプルだ。月額500円で会員になれば、6個入りの餃子(200円)がいつでも料理についてくる。350円以上の注文が条件となるが、福しんではラーメンが390円、生ビールも430円。つまり、主食やお酒を頼めばギョウザがついてくることになる。1日3回までしか利用することができないが、それでも「福しんギョウザ定期券」さえあれば、朝昼晩の3食の餃子が月額500円で食べられるメリットは大きい。

「以前から定額料金でサービスが提供できるサブスク(サブスクリプション)には興味がありました。ちょうどスマホで管理できる新しいサブスクが登場したこともあって、すぐに導入しました。8ヵ月間で集まった会員は500名弱です」(高橋社長)

 しかし、なぜ、サブスクがコロナ禍の業績回復の突破口になっているのか。

福しん店内。8ヵ月でサブスク会員が500名弱まで集まった

「優良顧客の囲い込みです。データを見ると会員の利用回数は1ヵ月間で平均4回ということが分かりました。しかも、緊急事態宣言が出た後も、この来店回数の『4回』という数字は変わらなかったんです。お店の営業時間が短くなっても、定期的に足を運んでくれるお客様が確保できることは、お店にとっても売上の大きな底支えになっています」(高橋社長)

 高橋社長曰く、1ヶ月で30回以上利用する熱烈な福しんファンのお客様もいるとか。コロナ禍で外食する店舗が絞られる中、サブスクでの顧客の囲い込みは今の時代にマッチしたリピート客の獲得方法と言える。