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家系ラーメン“のれん分け戦争”「吉村家vs.六角家」裏切りと屈服の黒歴史〈六角家破産〉

家系ラーメン“のれん分け戦争”「吉村家vs.六角家」裏切りと屈服の黒歴史〈六角家破産〉

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「『六角家』は破産しましたが、ジャンルとしての『家系ラーメン』は、年々店舗数が拡大しており、今が最盛期です。その背景には“資本系”の台頭があります。でもね、確かに資本系も美味しいんですが、かつて『六角家』や『吉村家』の職人たちが日々、味の改良に挑み、切磋琢磨して、互いに覇を競っていたあの時代が、倒産のニュースを聞いた今、妙に懐かしく輝いて見えるんです」(ラーメン評論家・山本剛志氏)(前編「家系ラーメン・名門『六角家』はなぜ破産したか」を読む)

吉村家 田中一明氏提供

「マジか」「もう一度食べたかった」

 2020年9月4日、かつて家系ラーメンの「代名詞」とまで呼ばれ、一世を風靡した老舗の名店「六角家」が、横浜地裁より破産手続き開始決定を受けていると報じられた。2017年に「六角家」の本店が閉じられ、倒産は時間の問題だったとみるファンも多かったが、いざこのニュースが流れると「マジか」「もう一度食べたかった」など、その倒産を惜しむ声がネット上などで多く上がった。そして、冒頭の山本氏のように、「六角家」がこれまで「家系ラーメン」業界の隆盛にはたした役割について、再評価する声も上がってきている。

「そもそも、家系ラーメンが誕生したのは1974年。長距離トラックの運転手だった吉村実氏が仕事の合間に趣味で密かに研究を重ねていた九州の豚骨ベースと東京の醤油ベースを組み合わせたスープを開発したことに端を発しています。この味ならいける! と判断した吉村氏はその後会社を辞め、『吉村家』というラーメン店を横浜の磯子区新杉田に開店。豚骨醤油ベースの風味豊かなスープと、モッチリとした『酒井製麺』の太麺を合わせた1杯は、本人の読みどおり大きな人気を集め、店は日々、大勢のお客さんで賑わいました。

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吉村家のラーメン 田中一明氏提供

 評判を集めた「吉村家」には、多くの才能が集まりました。そして、吉村氏の元で修業をした弟子たちは、吉村氏直々に教わり技術を身に着けると“暖簾分け”という形で自分の店を持つようになり、弟子たちの店もそれぞれのエリアで大人気店となりました。独立した弟子たちが店名に『~家』とつけることが多かったため、ファンの間で、『吉村家』とそこから独立した店は『家系』と呼ばれるようになりました。現在は、“家系皆伝”という証書を吉村氏からもらった店舗のみが吉村家の“直系店舗”として認められています」(ラーメン探究家・田中一明氏)