「飲食店は顧客管理の難しいビジネス」
この状況を打破したのが、ネットサービスで飲食店を支援する「favy」だ。
飲食店が簡単に導入できる「favyサブスク」のサービスをリリースしたのは2019年6月。自社で9店舗のサブスクの飲食店を運営し、様々なデータを集めて、3年の歳月をかけてシステムを作り上げた。
高梨巧社長は飲食店におけるサブスクの重要性をこう解説する。
「飲食店は顧客管理が難しいビジネスなんです。顧客情報を獲得する仕組みがサービスの中に組み込みにくいため、お店に来なくなったお客様にアプローチする術がありません。弊社のfavyサブスクを利用してもらえれば、スマホに個人情報を入力することになるので、飲食店でも容易に顧客情報を獲得することができるようになるんです」
どんなに高級な飲食店でも、いきなり「個人情報を教えてください」と言われれば、ドン引きしてしまう。しかし、サブスクのサービスを利用するのであれば、ネット通販で商品を購入するような感覚で、抵抗なく個人情報をスマホに入力してしまう。
favyのサブスクではお客様にメッセージを送ることができる他、お店のことを思い出してもらうためにネット上の広告も展開することができる。お客さんも広告を目にすることでサブスクの会員であることを思い出してくれるようになり、「せっかくだから久しぶりにお店に行こう」と足を運んでくれるようになる。
つまり、飲食店のサブスクは「定額制で飲み食いができる」という一面だけがフォーカスされてしまうが、実は顧客管理ができる強みが、コロナ禍において武器になっているのである。
「SNSはお店の存在が忘れられたら見てもらえなくなります。LINE公式アカウントもメッセージを送ることができますが、お客さんの来店や購入のデータを収集することができません。一方、サブスクは顧客管理ができて、メッセージを送ることもできるので、お客様を店舗側の意思で集客することができるようになります。サブスクというお得感が常にあるので、自店を選んでもらえる確率も高まります」(高梨社長)
現在、favyサブスクを利用する店舗は2000店舗を超えるという。コロナ禍に入ってから導入する飲食店が急増しており、サブスクを活用した顧客管理の流れは確実に業界に浸透しつつある。
コロナ禍から立ち直る店に共通することは…
コロナ禍で多くの飲食店が苦戦している。しかし、売上を少しずつ回復させている飲食店を考察すると、スタッフとお客様との間でコミュニケーションが取れていたり、店の料理にお客様が惹かれていたり、何かしらの“絆”が来店動機に繋がり、売上の回復を早めている。
一方、コロナ禍で苦戦している飲食店は、あえて言えば「わざわざ足を運ぶ必要がなくなったお店」といえる。たとえば、駅前や人通りの多いところに店があるものの、スタッフに思い入れもなく、料理もとびきり美味しいお店でもない、いわゆる「立地だけがウリ」の飲食店は、ますます苦戦を強いられるのではないだろうか。
その厳しい中、サブスクを活用してお客様を囲い込む戦略は、飲食店と利用者の新しい“絆”になっていくはずだ。コロナ禍が飲食店に与えた打撃は計り知れないが、その苦境から新しい飲食店の形が生まれて、立ち直った強いお店が、アフターコロナでさらに飛躍していくに違いない。