そこにあるのは、明滅する無数のLED(発光ダイオード)デジタル・カウンター。「1」から「9」までの数字が順に増えていったり、または減ったり。まるで呼吸を続けているかのよう。
カウントされる数字に見入ってしまうというのは、なんとも不思議な体験である。千葉市美術館で開催中、「宮島達男 クロニクル1995−2020」展会場でのこと。
無数のデジタル数字が永遠に時を刻む
宮島達男は1980年代から、数字を用いた作品をつくり続けるアーティスト。1988年に「第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ」アペルト部門に出品し注目され、以降、国内外で数えきれないほどの作品発表を繰り返してきた。
キャリアを重ねるごとに評価は高まり、いまや押しも押されもせぬ大御所である。
現在東京・六本木の森美術館では、日本の現代美術界のスターを集めた「STARS展」が開催されているが、そこで宮島は、村上隆、草間彌生、奈良美智、李禹煥、杉本博司とともに「日本を代表するスター」として出品作家に名を連ねている。
宮島作品の多くでモチーフになっているデジタル数字、これはいったい何を表しているのか。作品の前に立ち、じっと見ていて感じられるのは、これは生命の営みそのものじゃないかということ。
宮島はキャリアの最初期に、アーティストとして生きていくベースを築こうと、3つのコンセプトを打ち立てた。
「それは変化し続ける」
「それはあらゆるものと関係を結ぶ」
「それは永遠に続く」
というものだ。この3つのコンセプトを体現するかたちを探した結果、宮島は明滅する数字へと行き着いた。
数字そのものは無機的で抽象的だが、それが集まり動き続けることで、生命の輝きやリズム、輪廻のような世界観まで表せると気づいたのである。
数字はまた、国境や言葉を超えて通ずるユニバーサルなコミュニケーションツールでもあった。アートのモチーフとして、またとなく優れたものだと、プロジェクトを進めるうちに知ることとなる。
無数のデジタル数字が思い思いに時を刻んでいくので、宮島作品はつねにその姿を変えるし、同じ光景が現れることもまずあり得ない。その様子を眺めていると、いまこの瞬間は二度とやってこないのだと痛感する瞬間がやってくる。そうして誰しも、わが身とわが生の使い方を省みずにはいられなくなるのだった。