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証人たち、検察側も問題だらけ

 しかしながら、この混沌とした公判では証人側にも問題が散見される。

 前述の克行被告にどなられた女性秘書は、買収のための現金の一部を渡す役目も果たしており、やましい思いもあるのだろうか、チラチラと検察側に視線を向けていた。女性秘書は案里被告の公設秘書の肩書きを持っており、現在も税金から給与が支払われているとみられる。

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 現金を受け取った側の姿勢にも疑問が残る。ある重鎮の県議は、証人尋問で、現金を渡されたときに「違法なカネだと認識した」と証言した。しかしこの県議を含め被買収者は結局返金せず、飲食費に充てたと話しているケースもあるのだ。

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 過去の買収事件では受け取った側も罪を問われた例はいくらでもある。ベテランともあろう重鎮議員であれば、違法な金を受け取ることがどんなに危険か分かったはずだ。現金買収事件が発覚し辞職した議員・首長らもいるが、一方で辞職せずに今も現職を続けている議員も多くおり、不公平感が残る。

 そして、この混乱を招いている原因は検察側にもある。

 被買収者100人は未だに刑事処分の保留状態が続いている。いずれも不起訴(起訴猶予)処分が見込まれているというが、なぜその処分を行わないのか。配ったことを立証できるのであれば受け取ったことも立証できるはずで、捜査が終わっていないという言い訳は成り立たない。

「未処分」を、検察側に有利な証言をさせるための「人質」にしているのではないか、そんな疑念が湧いてくる。とすれば、証人の供述は信用できなくなってしまうため、この裁判は無意味なものになってしまう。また200万円もの大金を受け取った議員を不起訴処分として本当にいいのか、という問題もあるだろう。

©️iStock.com

 こうして大規模買収事件の背後では今も税金が垂れ流されている。この公判は一体どこへ向かっていくのか。今後、難航しているという克行被告の新たな弁護人探しと、その行方が注目される。