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衝撃のエプロン姿での撮影も…… 「何をしてでも生き残る」芸能生活20周年・ソニンの“波乱万丈”

10月18日はソニン芸能生活20周年

2020/10/18
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「今、何をするかが明日につながる」休業しニューヨークに留学

 ただ、一方では、思いの強さが空回りしているような感覚があり、自分のなかでモヤモヤが募ってもいたという(※5)。実力のある俳優たちに囲まれながら、自分が主役を演じることにもかなりプレッシャーを感じていたらしい。そんなふうに悩みを抱えていたとき、ちょっと息抜きしようとニューヨークに行った。そこで見たのは、周囲の目など気にせず、自信を持って生きている人たちだった。ここから《そんな街で暮らしたら、私自身のアイデンティティーも含めて、自分がマイノリティーだと思っていることや「生きづらい」と感じていることの理由も見つかるかもしれないな》との思いが芽生える(※6)。

2012年撮影 @文藝春秋

 だが、このころにはすでに舞台出演のオファーがあいつぎ、留学を申し出ても反対されるばかりだった。それでも彼女はひそかに準備を進める。仕事の合間を見ては何度もニューヨークに赴き、現地で知人を訪ねたりツテをつくったりし、ボイストレーニングの先生に根回しもした。そのうえで文化庁の新進芸術家海外研修制度にこっそり応募し、合格する。こうして2012年12月から休業して1年間ニューヨークに演劇留学し、期間を終えてからも自費でもう半年間、滞在を続けた。出発に際し、周りからは「それ、いままで築いたものを捨てるってことだよ」とも言われたという。それでも彼女のなかでは、《いつか、いつかって待ってたら、何もできない。戻る場所がなければ、それはそれまでだなって。明日なんて、誰も保障されてない。今、何がしたいか。今、何をするかが明日につながる》と決意は揺るがなかった(※7)。

帰国後の高い評価とあいつぐ受賞

 このときの決意はけっして間違いではなかった。帰国直後には舞台『三文オペラ』に出演。その稽古に参加したとき、共演者から口々に「変わったね」と言われ、公演を観た人たちからも「ニューヨークに行って正解でしたね」という手紙がたくさん届いたという(※6)。

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2012年撮影 @文藝春秋

 いまやソニンはミュージカルに欠かせない存在となった。その実力は、第41回菊田一夫演劇賞(2015年)、第26回読売演劇大賞(2019年)の優秀女優賞と、あいつぐ受賞でも証明される。今年1月~2月には、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の戯曲を生瀬勝久が演出した『グッドバイ』に出演(こちらはミュージカルではなくストレートプレイだが)。太宰治の未完の絶筆をKERAが喜劇として完結させた同作でソニンは、主人公の男が女性関係を整理するにあたり偽の妻になってもらうキヌ子というヒロインを演じ、見事なコメディエンヌぶりを見せていた。主演の藤木直人とは、『高校教師』以来じつに17年ぶりの共演だった。