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2020/10/27

泥酔する女性をホテルに運び込む

 裁判で認定された事実は簡明だ。ジャーナリストとして仕事を欲していた伊藤は、山口に言われるままに酒席を共にした。伊藤は意識を無くすほど、呑むこととなった。山口は泥酔する伊藤をホテルに運び込んだ。伊藤は「気持ち悪い」などと体調不良を訴え、実際に嘔吐した。その伊藤に対し、山口は性行為に及んだ。その際、伊藤の同意は無かった。よって、裁判所は山口の伊藤への準強姦を認定した(山口は控訴中)。

 以上は法律の問題だが、要するに山口は伊藤の同意無くして性行為に及んだ。法律用語において、相手の意識がある時に同意無くして性行為に及ぶことを強姦と呼び、相手の意識が無い時に同意無くして性行為に及ぶことを準強姦と呼ぶ。同じことなのだ。

©iStock.com

 そして道徳の問題だが、就職相談に訪れた異性を二人っきりで酒席に誘う時点で、マトモな会社ならコンプライアンス違反になる。何より、山口は妻帯者なのだ。娘もいる。

 だが、「ネトウヨ」の論理は違う。「伊藤詩織は仕事欲しさに色仕掛けの枕営業で近づいた」「山口さんはハニートラップに引っかかった被害者だ」などと決めつける。「ネトウヨ」にとって、山口は安倍さんに近い味方、その山口を傷つける伊藤は敵なのである。伊藤の支援者にはリベラル系の言論人が揃ったことで、「保守」は結束しなければ! との、身内を結束させる大義名分が発生した。

杉田の姿勢に喝采をあげる“ネトウヨ”

 こうした風潮は、杉田の支持者にも蔓延する。つられて杉田はネット番組で、伊藤をおちょくったイラストを提示されて笑い転げた。迂闊では済まない。

 ところが、杉田の姿勢に「ネトウヨ」は喝采をあげた。それどころではない。「保守」言論誌では山口を弁護すべく、伊藤への人身攻撃がなされた。曰く、「伊藤は挑発的な服装、そして下着で山口を挑発した。それが枕営業の証拠だ」「行為はあったが、合意の有無を問題にするのはパヨクの陰謀だ」云々。

 ここで「強姦や準強姦に思想の左右など関係なかろう」と諭しても無意味だ。「山口は安倍さんと近い味方、伊藤は敵」以外の結論を、「ネトウヨ」は認める気はないのだから。そうした人々に囲まれて、杉田も明らかに正気を無くしていた。

 見るに見かねた私は、「杉田さん! 今のあなたは、ただのネトウヨ言論人じゃなくて自民党衆議院議員ですよね。ここで山口を庇って政治生命を無くしていいんですか?」と詰め寄った。場所は神楽坂だった。共同講演会の始まる前、控室で二人きりになれる空間なので言える会話だ。ここまで言えば、杉田も我に返る。以後、沈黙してくれた。

 杉田が、山口を庇った件は、「パヨク」は騒いだが一般には広まらなかったので、ほどなくして収束した。

 ただし、これが終わりではなかった。

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