9月に発足した菅義偉内閣は「国民のために働く内閣」というキャッチフレーズを掲げ、デジタル庁の創設、携帯電話料金の値下げや不妊治療への保険適用など矢継ぎ早に政策を打ち出し、発足当初の支持率は大手各紙とも60%以上を記録、読売新聞の調査では74%など好スタートを切った。しかし、日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した問題が表面化すると、発足からわずか1カ月で、各紙とも支持率が低下した。

菅義偉首相(2019年撮影) Ⓒ文藝春秋

スピード感が仇となった日本学術会議問題

 10月26日には臨時国会が召集され、菅首相が政権発足後、初めての所信表明演説を行う。安倍晋三前首相の突然の退陣で誕生した菅内閣。この1カ月で見えてきた「本質」とは何なのか。政治ジャーナリストで白鷗大学名誉教授の後藤謙次氏に聞いた。

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菅政権を分析する後藤謙次氏 ©文藝春秋

 菅義偉政権が誕生してから1カ月の間に、この政権の「明」と「暗」がはっきりしたと思います。菅首相は発足当初、矢継ぎ早に政策を打ち出し、高い支持率を獲得する「ロケットスタート」に成功しました。これは菅政権が持つ政策実現のための「スピード感」の速さという「明」の部分が好意的に受け取られた結果です。しかし、その後、日本学術会議の会員任命拒否の問題が起きた際には、そのスピード感が仇となり、もっと落ち着いて問題に取り組んだ方がよい、いかにも対応が拙速だといった国民世論の批判がおき、支持率の下落を招いてしまいました。

 菅政権の特徴を一言でいえば、それは「境目がない」ということです。政権のナンバー2である官房長官として、それまで安倍政権を支えてきたのが、安倍前首相の突然の退陣表明によって、一気にナンバー1になった。しっかり準備をして、首相という地位についたわけではありません。ですから、菅首相が当初から掲げている「安倍政治の継承」というのも、何が前政権からの「継承」で、何が菅首相の「独自カラー」を表したものなのか、今のところはっきりと見えづらい部分があります。