あの暑かった夏もいつの間にやら通り過ぎ、すっかり秋である。秋も終わればいよいよ冬。冬になれば北国には雪が降る。雪というものは実に厄介で、雪国の暮らしにあらゆる面で影響を及ぼす。鉄道もそのひとつで、ひとたび大雪が降ればたちまち鉄道はストップし、生活の脚を直撃してしまうのである。さらに、あまり利用者の目には止まらないようなところでも影響を与えている。
たとえば北陸新幹線。東京から金沢までを駆け抜けている北陸新幹線は、北陸という日本有数の豪雪地帯を通っている。そこで大雪に見舞われれば、運行に支障はなくとも台車などに雪が張り付いてしまうことがあるという。北陸を走っているうちはその雪は台車に凍り付いているから放っておけば済むが、問題は気温の高い関東地方に入ってきてから。凍りついた雪が溶けて緩んで台車から落ち、その衝撃でバラスト(線路に敷き詰められている砕石)を跳ね上げてしまう。それがたまたま駅を通過しているときに起こるとホームのお客にぶつかって怪我をさせる可能性はゼロではない。お客からは見えない車両の下、台車への着雪が思わぬ事故を巻き起こすかもしれない、というわけだ。
7割外れた「雪」予想
もちろんこんな事故を起こすわけにはいかない。なので、北陸新幹線の中で“雪国側”を担っているJR西日本では、着雪が予想される場合は糸魚川駅で作業員を待機させ、本来通過する列車もわざわざ停めて雪を除去する作業をしているという。あらかじめ気温の高いエリアに入る前に雪を除けば事故はない。
「ですが、これまではなかなかその着雪の予想が当たっていなかったんですよ。天気予報をもとに人が経験と勘で判断していたのですが、単に雪がたくさん降れば着雪するわけでもなく、気温や風の影響もあるようで……。予想が外れて雪がついていないと、作業員の待機が無駄になってしまいます」
こんな話をしてくれたのは、JR西日本イノベーション本部の宮崎祐丞担当課長。新幹線の台車に付着する雪の話と宮崎さんが属するイノベーション本部とは、全く関係がなさそうに見える。が、なぜか宮崎さんが筆者にこのエピソードを話してくれたのだ。その理由は、この後に続く宮崎さんの言葉でわかる。