「乗ってみてください。乗ってみてください」
自身の専用車としてセンチュリーを採用したことの是非を問われ、井戸敏三・兵庫県知事は確信を込めた表情でそう繰り返した。実際に乗ってみれば、2,000万円クラスの車を「財政に苦しむ地方自治体の公用車」として採用する理由がわかるのだろうか。
皇族御用達車両の乗車体験を求められた県民
とりわけ説明責任に配慮すべき「税金の使い道」という問題に関して、聞く側に「体験型理解」を求めるというのは前代未聞といえる。しかもその理解が、多くの人間にとって一生縁のない(少なくとも筆者にはなさそうである)皇族御用達車両の乗車体験を前提としているのだから、反感を買うのも当然だろう。
安全性や走行性能、それらしい理由を提示してはいるが、「2,000万円」に対する説得力は脆弱であり、各方面からの批判はいまだ収束の兆しを見せていない。
実際のところセンチュリーを公用車としているのは兵庫県だけではないが、庶民感覚との著しい乖離を自ら露呈してしまった井戸知事に対する批判はしばらく続くと思われる。
とはいえ、自ら矢面に立ち説明責任を果たそうとする井戸知事の姿勢は見上げたものであり、結論ありきの批判を繰り返すのも生産性がない。ここでは、井戸知事のセンチュリー採用に対する言い分に耳を傾けたうえで、客観的な観点からその是非を問う。
井戸知事が提示した選考基準を検証する
井戸知事は10月19日の県議会で、「車種や価格の比較ばかりが強調されている。選ぶ際の考え方などが正確に報道されていない」と述べている。「選ぶ際の考え方」さえ正確に伝われば、多くの人間が納得するはずだということだ。
そこでまず、井戸知事が12日の会見において示した「走行性能」「安全性」「環境性能」「快適性」という選考の基準に照らしながら、センチュリーがそれに合致した車であるのかを検証してみたい。