1ページ目から読む
2/4ページ目

(1)走行性能:ポルシェ「911カレラ」以上の馬力

 井戸知事によれば、兵庫県は高低差があるため、山道をスムーズに走れる性能が求められるという。一般的な感覚からすると、排気量2,000ccもあればストレスなく山道を上っていける。ターボやハイブリッドなどの機構が備わっていれば、最近の車は1,500cc程度でも十分パワフルに坂を上っていってくれる。ところが井戸知事は、レクサスの3,500ccのエンジンでは知事車としてふさわしくなく、5,000ccクラスが必要だという。

高級スポーツカーの代名詞ポルシェ911カレラ ©iStock.com

 センチュリーに搭載される5,000ccのエンジンには、ハイブリッド機構による補助が加えられる。その出力は最大で431馬力に及び、これはポルシェを代表するスポーツモデル「911カレラ」(385馬力)をも凌ぐ数値である。速度制限のないアウトバーンをストレスなく疾走できるほどのパワーを、井戸知事は必須要件と考えているわけだ。一体、兵庫県の山道はどれだけ険しいものなのだろう。

(2)安全性:センチュリー独自の予防安全システムはない

 センチュリーには、トヨタの予防安全システム「Toyota Safety Sense」が導入されている。価格からするとセンチュリー独自の予防安全システムが取り入れられていそうなものだが、決してそのようなことはなく、むしろ「アルファード」「クラウン」「カローラスポーツ」「RAV4」「ハリアー」といった最新車種に搭載されている「夜間における歩行者検知」には対応していない。

ADVERTISEMENT

センチュリーには「夜間における歩行者検知」機能が搭載されていない(TOYOTAウェブサイトより)

 衝突安全性の面では、クラッシャブルゾーンの広さゆえ乗員保護に優れていることが推測されるが、JNCAP(自動車アセスメント)による衝突安全テストのデータはなく(販売数の少ない車種は対象となりにくい)、客観的な数値として他車種と比較・検討することが難しい。しかしそれでは、兵庫県はどのようなデータにもとづき、センチュリーの安全性能を高く評価したのだろうか。

 10月21日の会見で、井戸知事は貝原前知事の自動車事故による死を引き合いに出し、安全性に対する意識をことさらに強調していた。それほど安全性を重視しているのであれば、データにもとづく比較をしていて然るべきなのだが。