目蒲線が東急目黒線にかわり、武蔵小山に再開発の波が
だが、この街に変化の波が押し寄せてきたのが、2000年8月に実施された目蒲線の分割だ。これまで武蔵小山駅は目黒と蒲田を結ぶ目蒲線の、鄙びた駅だった。東急目蒲線も、目黒と蒲田間の多摩川沿いを走る地味な鉄道で、乗降客も比較的少ないローカル色の強い路線。私もかつてこの沿線の「鵜の木」駅近くに住んでいたことがあるが、駅前には成人映画館があり、東急線沿線のハイソなイメージとはとてもかけ離れた印象を抱かせるエリアであった。
ところが2000年の改正で目蒲線は多摩川駅で切り離されて東急目黒線と名称を変え、多摩川駅から東急東横線に乗り入れ、さらに9月には目黒駅から都営地下鉄三田線、東京メトロ南北線につながる大動脈路線に変貌したのだ。
さらに目黒線は洗足駅と不動前駅間の地下化が実施されたために武蔵小山駅も地下駅となり、駅前広場が再開発され駅ビルが整備された。2011年になると品川区は武蔵小山駅周辺地域まちづくりビジョンを策定、駅を中心に「武蔵小山駅前通り地区」「武蔵小山パルム駅前地区」「小山三丁目第一地区」「小山三丁目第二地区」の4つの街区で再開発事業がスタートした。
このうちすでに武蔵小山パルム駅前地区は20年1月に事業が完了。三井不動産レジデンシャルと旭化成不動産レジデンスが開発した地上41階、高さ142m、総戸数624戸のタワーマンションが竣工、分譲された。この地区はマンションのほか飲食店や雑貨店、保育園などが入居する低層棟で構成される。分譲価格は坪400万円台後半から500万円台でまだ若干売れ残りが出ているようだ。このタワマンの分譲時のキャッチコピーは「日本一、感じのいいタワマンへ」という何だか身体がむず痒くなりそうなものだったが、実際にできあがった威容を眺めると、感じがいい、というよりも何やら上から目線で見降ろされているような気になってくる。