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強化費捻出のためのクラウドファンディング

 そこで考えたのが、クラウドファンディングだった。

「東京オリンピックに向けた準備のため、2019年の11月からフィンランド、その後、2月からはフィンランドのナショナルチームと共に南アフリカでの合宿に参加するプランを計画しました。しかし、予算的に厳しいため、みなさんの協力を得ようと考えました」

 募集を行うホームページには、その内訳の説明がある。

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ご支援いただいた資金の使用内訳

 

◯渡航費

関空→フィンランド(ヘルシンキ)

フィンランド(ヘルシンキ)→南アフリカ(ヨハネスブルク)

南アフリカ(ヨハネスブルク)→関空

計 20万円

 

◯滞在費

フィンランド 宿泊、食費

 1日5000円×67日 → 33万5000円

南アフリカ 宿泊、食費

 1日7000円×43日 → 30万1000円

計63万6000円

 

総計 83万6000円

 

クラウドファンディング手数料の17%を差し引いて、今回100万円の金額に設定させていただきました。

 そして太い文字で、こう記してあった。

東京2020への架け橋となる合宿、活動の支援をどうか宜しくお願い致します!

©文藝春秋

 陸上の現役選手としては、異例の資金調達方法である。資金の援助を受けることは、結果を残す自信がなければなかなか出来ることではない。ディーン本人は、資金を集めることへの思いをこう話した。

「自分を信じていたという面はありましたね。投てき種目の選手寿命を考えると、20代後半はちょうど脂の乗った、選手として成熟した時期なんです。2019年は、記録こそ78m00cm止まりでしたが、久しぶりにたくさんの大会に出場できて、土台が作れた感触がありました」

 本場での合宿が、なんとしても必要だったのだ。

 クラウドファンディングは、結果的に支援者は93人、124万7000円が集まった。

「自分でもあれだけのお金が集まるとは思っていませんでした。記録が落ちているにもかかわらず、僕という人間の可能性を感じ、これだけ期待してくれている人がいるんだ、と思うと、感謝しかなかったです」

 ディーンは11月26日に日本を出発、南アフリカでコロナ禍に遭遇しながらも、今年3月26日に帰国するまでトレーニングを積むことができた。

©文藝春秋

今後のアスリートのモデルケースにも?

 ディーンのこうした動きは、今後のアスリートの活動にも影響を与えると思われる。陸上の場合、大学を卒業してから企業で競技を続けられるのは、ほとんどが長距離の選手たちだ。駅伝、そしてマラソンがあるからだ。

 しかし、短距離、中距離、跳躍、投てきとなると、大学時代に日本でトップクラスの実績を残さなければ企業の支援は受けられない。