昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

日大アメフト「悪質タックル」から2年――宮川泰介が新天地で見せた“魂のタックル”

2020/10/29

 奇しくも大学時代と同じ赤いユニフォームに身を包んだ背番号97番は、オフェンスラインのブロックを素早い動きと絶妙なハンドテクニックでかわすと、クオーターバックの死角から、猛スピードで迫る。

 薄暗さを増したフィールドで、カクテル光線がヘルメットに反射していた。

 パスを投げようとボールを振りかぶったクオーターバックの右腕に対して、一瞬早く手がかかる。

 右手でボールを叩き落とし、左手は相手選手にフルタックルを浴びせる。こぼれたボールは味方選手がカバーし、攻守が逆転する。お手本のように美しいサック&ファンブルフォースだった。

Xリーグデビュー戦となった背番号97の宮川(富士通公式サイトより)

 10月24日に行われたアメリカンフットボールのXリーグ初戦。

 コロナの影響を受けて例年とは1か月以上遅れての開幕ではあったが、会場には多くのファンが詰めかけ、入場制限のため入り切れなかった観客たちの中には、スタジアムの隙間から試合を覗いている者も多くいた。

 冒頭のシーンは、昨季4連覇を達成し、日本一に輝いている富士通フロンティアーズとノジマ相模原ライズの一戦での一幕だ。素晴らしいプレーではあったが、アメリカンフットボールではよく見るディフェンスチームのファインプレーのひとつだといえる。

 ただ、それが多くの人にとって大きな意味を持っていたのは、このプレーを見せた背番号97のルーキーが、宮川泰介だったということだ。

2年前に起きた日本中を巻き込んだ“大騒動” 

 日本ではマイナーともいえるアメリカンフットボールという競技の選手にも関わらず、宮川の名前を憶えている人は多いのではないだろうか。

2年前に「悪質タックル」事件で当事者となった宮川 ©文藝春秋

 2年前の5月6日、調布市で行われた日本大学と関西学院大学によるアメリカンフットボールの名門対決で、日大側の選手が3度のパーソナルファウルを犯し、退場となる事態が発生した。その退場した選手が、当時大学3年生の宮川だった。