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突然社会問題化した“悪質タックル”事件

 その中のひとつのタックルは、明らかにプレーが終わったあとの選手を狙ったように見えたこともあり、映像がSNS上で瞬く間に拡散された。そこから当時の監督やコーチによる選手への圧力や、部の度を過ぎた体育会系のタテ社会が明るみに出、連日ワイドショーやニュースで報道される社会問題化していったのだ。

行き過ぎた上下関係のある組織の在り方が問題視された ©文藝春秋

「ほんの1週間前は、TOKIOの山口さんが書類送検されたニュースをワイドショーとかで見て、みんなで『大変なことが起きたね』という話をしていたんです。テレビの中の世界は、どこか別世界の話だった。ところが、あの試合のあとからはどの局の、どの番組を見ても自分たちが取り上げられている。言い方が悪いかもしれませんが、現実感が全然なかったのが正直なところです」

 当時の日大アメフト部員のひとりは、かつての喧騒をそんな風に振り返る。

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 反則行為の指示を出したコーチや監督の会見に加え、最終的にはタックルを行った宮川本人までが“実行犯”として会見の場に引きずり出された。そこでは「この先、アメリカンフットボールをやるつもりもありません」という悲壮な言葉まで残すことになった。

1年半後にようやく果たせた「リーグ戦復帰」

 その後、チームは再建のために指導者陣を一新。日大フェニックスは1シーズンの公式戦への出場停止措置を経て、2019年の秋シーズンに、グラウンドへと帰ってきた。

 宮川本人も、「チームを立て直そうとしているチームメイトに対して、あまりにも無責任なんじゃないか」という思いから最終的にはチームに復帰。最後は2018年の公式戦不出場を受けて1部下位リーグに降格していたチームを上位リーグに引き上げて、大学のフットボール生活を終えていた。

日大フェニックスは1シーズンの不出場を経て2019年にリーグ復帰 ©文藝春秋

 一方で、事件があった年の4年生にとっては、最後のシーズンがなかったということになる。宮川たちの学年も、下位リーグからのスタートということで、最後の年にフットボーラーの目標でもある甲子園ボウルという舞台を追うことはできなかった。

 そこについては復帰後も、「自分がしてしまったことがなくなることはないので、手放しで喜ぶわけにはいかない」と語っていた。