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 なかには「なんだかドキドキするね……」という言葉を漏らすファンもいたが、その「ドキドキ」という言葉の響きには、複雑な意味が込められていたように聞こえた。

 フィールド上では宮川に先輩選手が、「いまのは大丈夫」というように駆け寄り、小さく腰のあたりでタッチをしている姿もあった。

2019年撮影 ©文藝春秋

超ビッグプレーに対して、宮川のリアクションは……

 しばらくの中断の後、審判の判定が下り、サイドラインに下がった宮川には、チームメイトから手荒い祝福が行われた。

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 ルーキーのデビュー戦での超ビッグプレーである。普通なら、大きく吠えたり、感情を爆発させるようなシチュエーションだったはずだ。

 だが、そこでも宮川は感情を表に出すことはなく、ただ淡々とその祝福を受け入れていた。不自然なまでに、クールで、落ち着いていた。老成しすぎていたと言ってもいいかもしれない。

 そんなシーンを見て思ったのは、やはり振り返って2年前、弱冠20歳の青年に降りかかった苦難は、個人に背負わせるにはあまりにも重すぎるものだったように思う。事件そのもの以上に、その後も周囲の大人たちによって振り回され続けた。それによって「フットボールをする資格がない」という発言までさせてしまった。

 ようやく所属も変わり、学生から社会人へと立場も変え、宮川はこうしてフィールドで、忖度なくプレーできるようになった。少なくとも、プレーの上では、この試合で見せた会心のタックルに「躊躇」はなかったように思う。

日大は2019年シーズン全勝で1部上位リーグ復帰を決めた ©文藝春秋

 だからこそ次は気兼ねなく、素直に感情を爆発させる瞬間を期待したいと思った。

 この試合に48-3で圧勝した富士通フロンティアーズは次節、11月7日に優勝候補のひとつであるIBMとの大一番を迎える。

 次節、宮川はそこでどんな表情を見せてくれるだろうか。