毎年夏から秋にかけて目にすることの多い台風の予報。昨年9月に発生した台風15号は、気象庁が観測を始めた1951年以降最も強い勢力で関東に上陸し、千葉県を中心に大きな被害をもたらした。非常に強い風によってゴルフ場のポールが倒れ民家を破壊した様子はテレビで何度も放映され、台風の脅威として記憶にある人も多いだろう。

昨年の台風15号で倒れたゴルフ場のネットと電柱

 しかし「最大級の警戒を」と天気予報で呼びかけていた台風が2日後には「進路を変えて○○沖に向かう」「○○海上で温帯低気圧に変わった」となることもよくあるというのは気のせいだろうか。今年9月には、「100年に一度」とさかんに警戒が呼びかけられていた台風10号が急速に勢力を弱めたり、10月に入って発生した台風14号が突然進路を変え「Uターン」したといわれたことも記憶に新しい。

 実際、台風予報の精度はどのくらいのものなのだろうか。

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5日後までの予報ができるようになった

 横浜国立大学で長年台風の研究をしている筆保弘徳教授は、「進路に関する予報の精度はここ数年でだいぶ上がっています」と強調する。

 台風は周囲の風によって動く。そのため、その風をしっかりと観測し、コンピュータにできるだけ正確なデータを蓄積することができれば、予報の精度は格段に上げることが可能なのだという。近年はこの風の観測がだいぶうまくできるようになってきていて、進路に関しては、現時点から3日後までの予報が精いっぱいだった2年前に比べ、5日後までの予報ができるようになっているのだ。

筆保弘徳氏(横浜国立大学教育学部教授)

 天気予報でよく見かける台風の進路予報図は、円とそれを取り囲む線で構成されているが、この円を「予報円」という。

「この予報円は、『統計上70%の確率で台風がこの円の中に入ります』というもので、逆に言えば30%は外れるんですよね。予報円の中心と実際に台風が来たところの距離を『予報誤差』と呼ぶのですが、これは現在だと、一日に100キロメートル程度が平均。100キロというと、東京に来ると言われていた台風が箱根に上陸するくらいの誤差は出てもおかしくないわけです。これを惜しいとみるか、外したとみるかは人それぞれですが……」