AIも手こずる台風予報
一方で、強度の予測についてはまだあまり精度が上がっていない。強度予報のためには台風中央部付近の構造を知ることが必要だが、これを直接観測(驚くべきことに、1987年までは米軍の飛行機が観測のため台風に突っ込んでいたという)以外の方法で行うことは難しいため、いまだ強度予報については課題が残る。
では、コンピュータ上でのシミュレーションにとどまらず、AIによってより正確な台風予報を行うことはできないのだろうか。
「AIは万能ではありません。手元にある大量のデータから近似のものを予測することは得意ですが、そこから大きく外れる、私たちの最も知りたい『100年に一度』といった巨大な台風は予想できません。『100年に一度』級の巨大な台風を過去に経験したことがないので、データがないからです。AIは過去最大といった例外や想定外を予測するのは苦手なのです」
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様々な研究が日夜行われてはいるものの、台風の進路や強度を正確に予測できるようになるのはまだまだ先のことになりそうだ。
台風学者・筆保教授が語る、台風による想像をはるかに超える経済的損害や被害軽減のための「台風ハザードマップ」、伊勢湾台風が現代に再上陸したとする驚くべきシミュレーション結果などについては、「“最凶”台風が『東京』に上陸する」と題して、現在発売中の「文藝春秋11月号」および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。
100万戸が被災 “最凶”台風が「東京」に上陸する